保育園における安全管理は、子どもたちの健やかな成長をサポートする上で欠かせません。日常に潜むヒヤリハット事例は、どの園でも起こり得るため、事前に把握しておくことが重要です。
この記事では、保育園で発生し得る具体的なヒヤリハット事例を内閣府の「教育・保育施設等におけるヒヤリ・ハット事例集」をもとに紹介します。
また、それらを未然に防ぐため園側が実施できる有効な対策についても詳しく解説していきます。緊急事態を回避し、安全な保育環境を実現するためのノウハウを、ぜひこの記事を通して身につけてください。
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引用元:保育のカタチ
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保育園におけるヒヤリハットとは?
保育園におけるヒヤリハットとは、子どもたちが園で過ごす中で発生したり発生しそうになったりした、事故やケガに至る可能性のある「危険な兆候や出来事」のことを指します。
たとえば、子どもが遊具で遊んでいるときに転んでしまい、幸いケガには至らなかったものの、遊具の安全性に問題があった場合、それはヒヤリハット事例として記録し、今後同様の事態を防ぐための対策を講じる必要があります。
【場面別】ヒヤリハットの事例
ここからは、具体的なヒヤリハット事例を、内閣府の「教育・保育施設等におけるヒヤリ・ハット事例集」をもとに紹介します。
送迎時
まずは、送迎時のヒヤリハット事例について見ていきましょう。
- 降ろし忘れ
- 乗せ忘れ
- 乗せ間違い
それぞれ詳しく解説します。
降ろし忘れ
降ろし忘れでは、送迎担当者が送迎リストの確認を怠って運行を開始し、目的地到着時に点呼をしなかった結果、子どもが車内に残ってしまったという事例が発生しています。
このような状況下では、子どもが長時間車内に置き去りにされたり、車内温度が上昇して死亡事故につながったりする重大なリスクが生じます。
乗せ忘れ
集合場所での確認ミスにより、子どもをうっかり乗せるのを忘れてしまった場合、子どもを1人取り残してしまうヒヤリハットとなる可能性があります。
送迎時の事故やトラブルを未然に防ぐためには、リストのチェック体制を明確化させることが非常に重要です。また、何か問題が起こったときに素早く対応できるよう、緊急時のプロトコルや連絡体制の整備も必須となります。
乗せ間違い
送迎時の乗せ間違いは、子どもたちの安全に直結する非常にデリケートな問題です。担当者がリストと実際の乗車している子どもたちを正確に照合しないことで、間違った子どもがバスや車両に乗せられてしまうリスクがあります。
リストは常に最新の情報を反映したものでなければならず、保護者からの特別な指示があればそれを適切に処理するシステムも整えられている必要があります。
園外保育
次に、園外保育中に起こり得るヒヤリハット事例についても確認しましょう。
- 置き去り
- 見失い
- 列からの離脱
- 飛び出し
それぞれ詳しく見ていきます。
置き去り
子どもたちを外の環境に連れて行く活動は、新たな学びや体験を提供しますが、同時にリスクも伴います。園外保育における「置き去り」は、特に注意が必要です。たとえば、先生が子どもたちの人数を頻繁に確認せず、公園の一角で遊んでいる最中に、小さな子どもが隠れてしまい、見落とされるというケースがあります。
見失い
見失いは、交通事故のリスクや行方不明事件に発展する可能性があるなど、非常にリスクの高いです。保育の現場では子どもの安全が最優先され、特に外出時には厳重な注意体制が要求されます。
園児全員を随時カウントすることは、保育士の基本的責務です。移動時、特に到着後や活動中は園児が散らばりがちなので、頻繁に確認しましょう。
列からの離脱
列からの離脱は、園児がグループ行動中、特に外出時に列から離れ、先生の視界から外れてしまうことです。子どもが迷子になるリスクがあります。また、交通量の多い場所だと、交通事故に巻き込まれる危険性も高くなります。
集団を歩行する際は、子どもたちが散らばらないよう定期的に人数確認をし、見通しの良い場所を選んで移動するようにしましょう。
飛び出し
「飛び出し」は交通事故に巻き込まれるリスクがあるため、非常に危険です。子どもたちが遊ぶ場所は安全な範囲内であることを確認し、特に交通量の多い道路や危険な場所に近づかないようにしてください。
また、移動中も子どもたちが突然道路に走り出してしまう可能性があるので、特に交差点や駐車場の付近では、手をつなぐなどして子どもたちの安全を確保しましょう。
園内保育
次に、園内保育のヒヤリハット事例について見ていきましょう。
- 置き去り
- 閉じ込め
- 抜け出し
- 離脱
- 衝突
それぞれ詳しく確認します。
置き去り
不注意により園児を園庭や施設内に置き去りにしてしまう事例は非常に危険です。子どもが不安を感じるだけでなく、事故につながりかねないなど、保護者からの信頼を失う原因にもなります。
部屋を離れる際には必ず子どもたちの数を数え、全員がちゃんと連れ出せているかを確認する必要があります。また、移動時には必ず人数確認をし、特に下車時や施設を離れる際には子どもたちがすべて揃っていることを再確認することを徹底しましょう。
閉じ込め
施設内のトイレや倉庫などに子どもが1人で入り、中から出られなくなる可能性も考えられます。トイレに行くときには必ず引率をつけ、使用後はドアが開いているかチェックするもしくは安全な取り手がついた扉を設置するなどの配慮が必要です。
抜け出し
子どもが気づかないうちに教室や保育園の敷地から抜け出してしまうという事例も発生しています。
門や扉には安全な鍵がかかっていることを確認し、また、子どもが出てしまう恐れのある隙間を埋めておくなど、細かなところまでしっかりチェックすることが大切です。
離脱
離脱の事例として、保育園の園庭で遊んでいたはずの子どもが監視の目をすり抜けて保育園の建物内に勝手に入ってしまったというケースがあります。子どもたちが一箇所に集中して遊んでいる際も、出入り口や他の危険がある場所へのアクセスを管理し、物理的なバリアとしてフェンス、扉の鍵などを掛けましょう。さらに、保育士の配置を見直したり巡回を行ったりするなどの監視も適切に行う必要があります。
また、子どもたちには保育園のルールやその理由をきちんと伝えることも重要です。
衝突
衝突は、他の園児やものとぶつかってしまう事故です。子どもたちが遊具を使用したりや走り回ったりしている最中は、転倒や他の子どもやものとの衝突のリスクがあります。
園児がブランコに乗っているとき、他の子どもがブランコの動きに気づかないまま、その進行方向に飛び出してしまう状況はよくある事例です。ブランコから勢いよく降りてくる子どもと衝突したり、ブランコが最も後方に達する瞬間に後ろから子どもが近づいたりすると衝突のリスクが非常に高くなります。
また、遊具の上や不安定な地面での遊びは、転倒して怪我をする可能性が高まります。遊具の周囲は常に監視し、走り回る子どもたちを見守ることで、危険な「飛び出し」を防止するための安全管理を徹底する必要があります。
その他
- 水場への転落:水辺での活動時には、非常に高い溺水リスクが伴います。子どもがたとえ一瞬だけでも水辺に接近する場合には、常に保育士が同伴し、フェンスで囲まれた安全な場所を選びます。
- 死角での痙攣発作:園児の中には痙攣発作を持っている子がいるかもしれません。保育士は子どもたちが視界に入る場所で遊ぶように心がけ、痙攣発作のサインを知っておく必要があります。
- 火傷:料理活動など火を使う場合には、火傷のリスクも考慮しなければなりません。保育士は火の扱いに関する指導をしっかり行い、十分な監督下で活動をしてもらうことが大切です。
これらの事態を未然に防ぐためには、日ごろからのルーチンチェックと子どもたちの行動に注意を払うとともに、園児の一人ひとりをよく観察し、安全対策を徹底することが必要です。保護者に対しては正直かつ丁寧に状況を話し、今後の安全対策を細かく報告する必要があります。
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保育園ができるヒヤリハット対策とは?
保育園におけるヒヤリハット対策として、危険予測の徹底・職員の研修強化・安全な環境作り・事例共有と対策の定期的な見直しが重要です。
ヒヤリハットを軽減するには、以下のような対策が有効です。
- 遊具の定期的な安全チェックを行い、不具合があればすぐに修繑する
- 子どもたちに適切な遊び方を指導し、特に高いところや動く遊具での遊びには注意を向ける
- 広い視野を持ち、複数の先生が異なる角度から子どもたちを監視する
- 走り回るときには、安全なルートやエリアを指定して、そこでのみ走るように指導する
常に予防策を講じ、子どもたち一人ひとりの動きに注意を払うことで、安全な園内保育を実現しましょう。子どもの行動範囲や遊具の安全チェックを日常的に行い、ヒヤリハット発生時はその情報を職員間で共有し、再発防止策を講じることも重要です。
新人研修でもヒヤリハットが起こらないように注意しよう
新人研修においては、不慣れな新人保育士が対応を行うことに加えて、先輩保育士も指導に注力してしまいがちなため、特に注意を払うことが肝心です。実際に現場に出るまえに、保育園の具体的な環境と過去のヒヤリハット事例を共有しておくと良いでしょう。
- 安全管理の基本:安全な環境整備の基礎知識と、園児の安全を守るための基本行動。
- リスク認識:園児の年齢や発達段階に応じた危険予測と、それを回避するための具体的な方法。
- 緊急時の対応:ヒヤリハットが起こった際の応急措置と報告の流れ。
- 事例の共有:定期的な事例研修を実施し、経験を共有することで予防策を学ぶ。
研修期間が終了しても、定期的にフォローアップ研修を行い、ヒヤリハット対策の知識を更新し続けることが大切です。これにより、新人保育士も状況に応じた適切な判断ができるようになるでしょう。
まとめ
ヒヤリハット事例をしっかりと把握して記録することで、より安全な環境づくりを進められます。
子ども一人一人に対して目配り、気配りを常に行い、十分な人数の引率者を確保することが重要です。また、事前にリスク評価を行い、必要な安全対策を計画的に実施することが大切です。安全な園外保育のために、この記事で紹介したヒヤリハット事例を忘れずに、しっかりと対策を立てていきましょう。
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