【保育園・幼稚園の人事担当者必見!】幼保施設スタッフの心理的安全性を高める方法【実践編】

目次

はじめに

この記事は、幼保施設スタッフの心理的安全性を高めるために、具体的にはどうしたら良いのか、というポイントをご紹介していきます。

前提としての知識を、【知識編】で紹介していますので、まだお読みでない方は、是非こちらからお読みください

知識編では、心理的安全性を高めるには、以下のポイントが重要ということをお伝えしました。

・関係性:幸せと成長を喜び合う関係づくり
・自己効力感:うまくいくか分からないけど、とにかくやってみる
・自律性:自分の行動は自分で決める、同時に人の主体性も尊重できる
・目的と意味:今やっていることの目的や意味を明確に
・多様性:人との違いは当たり前と歓迎して、ありのままを受け入れる

今回は、これに「強み」のポイントを付け加えて、具体的にどうするのか、というご紹介をしていきます。

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関係性

よい関係性をつくることは、幸せだけでなく、挑戦と成長につながります。
良い関係性が安全基地になることで、挑戦と成長をすることができるようになっていきます。

質の良い関係性を作る

心理的安全性の土台には質の良い関係性を作ることが第一歩。最優先で考えていくことが重要です。

厚生労働省の調査でも、保育士の退職理由のトップは人間関係の問題であるとされています。

良い関係性を築き、スタッフが幸せになることで、仕事のやりがいにつながります。

上下関係だけでなく、横の関係をよくする

マネージャーはどうしても、縦の関係での仕事が多くなります。
縦の関係だけではなく、部下同士の関係をよくする工夫をすることで、部下にとって、横の関係も心理的安全を高められる場になります。

スタッフ同士がどうすれば優しい関係を育めるかという働きかけを積極的に行ってみてください。

自分らしくいる

心理的安全性の高い関係をつくっていくためには、自分らしくいることが基本です。
特にリーダーが率先して行うことが望ましく、

・発言と行動が一致している:人に見せている自分と本当の自分が同じ
・自分らしくある:無理をしない、格好つけない。

という、自分らしく、発言と行動が一致した誠実な人が求められています。

特に、強みだけではなく、弱みも自己開示できれば、スタッフたちにも、これでいいんだ、という感情が芽生えて、心理的安全性が増します。

人間関係を壊す4つのNG行為

私たちも人間なので、聖人のように振る舞い続けることは難しいことです。しかし、できる限り人間関係を壊すようなことを最小限にする努力はしていくことが大切です。
特に、以下の4つのNG行為については、職場の人間関係を壊してしまうおそれがありますので、注意してみてください。

4つのNG行為と解決策

・批判:相手を責めるのではなく、して欲しいことを気持ちよくリクエストしてみる

・侮辱:相手の可能性を信じる選択をして、何が必要か話し合ってみる

・自己弁護:私は悪くない、問題はあなた(周りの環境)にあるという言い訳をすることで、謝る機会がなくなります。まずは謝ること。間違ってもいいという文化をつくることがポイントです。

・逃避:起きている問題について話すのを避けること。大切なことは、お互いの幸せと成長のために勇気をもって話し合うことです。

例えば、ミーティングの最初にガイドラインを示してみるという方法があります。
・どんな意見にも耳を傾ける
・質より量を歓迎する
・人の意見の批判はしない
というルールを最初に明示することで、意見をいってもいい、批判されない、という心理的安全性を高めることができます。

このように4つのNG行為を極力減らすことで、安全な場ができていきます。

良いことからシェアする

皆で話し合う場では、最初に良いことの話題でスタートすると、ポジティブな感情が生まれます。このことは、以下のような良い結果をもたらします。

・同じ場でポジティブな感情を持った人たちは、グループ内での信頼関係ができて心理的安全性が高まる。
・ポジティブな状態は視野が広がるので、問題を解決しやすくなる

良いニュースを一緒に喜ぶことで、良い関係性をつくることができるようになります。

できることから始めてみる

職場の関係性をよくするために、全体を巻き込んだ大きなことからスタートする必要はありません。
本当に小さな一歩、今の自分にできることから始めてみることが大切です。

・最近何か良いことあった?
・それはいいですね!もっと聞きたいです!

など、毎日の声かけを意識してやってみる、
「私はあなたとの関係性を大切にしています」
ということを行動で示していくことを少しずつ始めてみましょう。

自己効力感

自己効力感とはどのようなものでしょうか。
自己効力感とは、結果を恐れながらも挑戦できる力の源になっているものです。

やればできる、ではなく、自信がなくても、不安があってもやってみようと思って行動できる力のことを指します。

自己効力感の段階

自己効力感には段階があります。
最初の段階は、怖くて何もできない段階
2番目に、やればできるかもしれない、と可能性や希望を感じる段階
3番目に、きっとできるという自信に溢れた段階
1番上は、できるかどうか分からないけどやってみようと思える段階です。

自己効力感が高い人には、以下のような特徴があります。

・自分の行動が周囲に影響を与え、意味があるものなんだ、という「信念」をもっている
・難しい課題でも努力すればすこしずつでも目標に近づけるという「希望」をもっている

この2つは生まれながら持っているというよりも、そう考えることを選択したという状態が近いです。

自己効力感のベースは関係性

では、できるか分からないけどやってみようと思えるのはどのような時でしょうか。

・応援してくれる人が1人でもいる
・努力で能力が伸びていると思えている
・失敗を悪いものだと思っていない
・結果よりプロセスを重視している
・好きなこと、大切なことをしている

このようなときにそう思えるのではないでしょうか。

特に、応援してくれる人が1人でもいる、というような、いつでも戻れる場所があると、新しいことに飛び込んで行きやすくなります。

前述の良い関係性という土台があるからこそ、自己効力感が高まります。

能力は努力で伸びる

研究によると、あらゆる分野で成功している人の共通点として、能力は努力で伸びると考えていることが分かっています。

能力は生まれつき決まっているのではなく、努力で伸びると信じていれば、
今できていないことでもやり続けることで、できるようになると思えます。

このことをまずは自分が選択し、チームにも伝えていくことで、チーム内の自己効力感が高まっていきます。

失敗を悪いこととしない

失敗して落ち込んだ時などは、失敗と成功は同じ方向にあるということをつい忘れてしまいがちです。

失敗を悪いものと考えなければ、責めたり叱ったりすることが必要なくなります。
以下の3つのポイントに注目してみることが大切です。

・やってしまったことよりも、今の本人の気持ちに注目する
・能力ではなく、行動やプロセスに注目する
・理想の未来と、そこへいく方法に注目する

このときに、「あなたは本当はできる人だから大丈夫」と、能力の話にすることは避けましょう。

自己肯定感の低い人には役に立たない声かけになってしまいます。

過ぎたことよりも、これからに目を向けること、つまり、

・なぜ、誰のせいで起こったか

ではなく、

・どこへ行きたくて、そのためにこれから何ができるのか

を考えることが重要です。

自己効力感を高める声かけ

自己効力感を高める声かけは、子どもから大人まで、全員に使える声かけです。
特に保育の現場では、子どもたちにはできるけど職場の仲間にはしていない、という状況もよく見られます。

子どもたちと同じように、職場の仲間にも自己効力感を高める声かけをしていけば、良い循環が様々なところで起きるようになります。

以下にポイントをご紹介していきます。

・うまくいったときに「なぜうまくいったのか?」を聞く
・能力より行動にフォーカスする:努力したこと、頑張ったことについて伝える
・結果より過程にフォーカスする:集中したこと、かけた時間について伝える
・正しさより、勇気にフォーカスする:やってみたこと、挑戦そのものについて伝える
・価値判断、批評より、事実+ポジティブな感想+感謝
・比較より成長にフォーカスする:進歩したこと、成長したことについて伝える
・事実より感情にフォーカスする:どんな感情、気持ちだったの?と聞く
・弱みより強みにフォーカスする:強みを使ったらどうなるかを聞く

この声かけができるようになると、自己効力感がどんどん高まっていきます。

自律性

自律性と自主性は言葉として似ていますが、自主性は言われなくてもやることのことです。

対して、自律性とは、自分の規律に従った行動を自分で決めて、自分で動いていくことを言います。自律性は予測できない変化がに対応していく必要があるこれからの時代にとって、とても重要な力です。

自律性の高い人は、全体を見て、周りや自分の幸せ、成長に役立つと思うことを自分で決めて、それを実行していく人です。

自律性を高めると、心理的安全性が高まり、また、心理的安全性が高まると自律性が高まるという、相互関係にあります。

では、自律性を高めるにはどのようにすればよいのでしょうか。

強制的にやらせない

良いことでも、強制してやらされると、何もしないよりも幸福度が低くなります。
特にマネージャーなどのポジションでは、強制的に仕事をやらせてしまいがち。
やらされている仕事は、やりたい仕事に比べて生産性が2000分の1になるという研究もあります。

では、強制的にやらせないためには、どのような関わり方をすれば良いのでしょうか。以下の3つがポイントです。

・本人の気持ちへの共感
・なぜそれが大切なのかを説明
・圧力を最小限に、リクエストか選択肢を提供

このことに注意して関係を作っていきましょう。

相手のタイプに応じて、方法を変えてみるのも良いでしょう。

コントロールしない

メンバーの自律性を育てるためには、一人ひとりの裁量を重視して、できるだけ口を挟まず、コントロールしないことが重要です。

まわりとの信頼できる関係性があれば、人は自分の意思で行動することができます。

まわりの人に信じてもらい、やってみようと思えて、無理にやらされなければ、自然と育っていきます。

ルールや決まりが厳しくなればなるほど、自律性が低くなっていくということは覚えておいてください。

罰や報酬に注意する

罰や報酬も、人をコントロールするためのものになる可能性があります。
特に、報酬に関してはなかなか止めるのが難しく、報酬でも自律性を失うことがあること、心理的安全性につながらないことは意識しておくポイントです。

ただし、報酬とお祝いは別で、達成を一緒に喜んだりお祝いをすることは、相手のよいニュースを一緒に喜ぶのと同じ、関係性をよくすることに大いに役立つので、積極的に実施していきましょう。

夢中になれる環境をつくる

仕事が面白くなって、夢中になると、驚くほど多くのことがこなせていることがあります。
これをフロー体験と呼びます。

フロー体験は、自律性をとても高める状態です。
この状態は、職場で、しかも意図的に引き起こすことも可能です。
ポイントは、

・課題のレベルとスタッフのスキルがギリギリ釣り合っていること
・明確な目標があること
・迅速なフィードバックがあること

少し頑張れば手が届く、という課題に、

・進み具合を可視化しながら
・プロセスにフォーカスした声かけをする

ことが大切です。

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目的と意味

普段、自分のやることの目的と意味を明確に考えていますか?
例えば、

・何のためにこれをしているのか:目的
・どこへいきたいのか:目的
・それがなぜ大切なのか:意味
・そこへ行くとどんな良いことがあるのか:意味

目的を持つことが心理的安全性を高めるためにはとても重要です。
そして、目的に意味が追加されることで、さらに心理的安全性が高まります。

なぜ大切なのか、という質問は重要で、
自分の望んでいることなのか、周囲や常識に合わせてやらされているものなのかが分かります。

是非考えてみましょう。

失敗しないことが目的化している

他人の目や評価を気にするあまり、失敗しないことが目的化してしまうこともあります。
しかし、今やっていることは評価されるためではなく、社会貢献や自分の成長のためにやっていることと考えれば、目的も見えやすくなります。

・上司や園のやり方に沿わなければ責められる
・自分の評価が下がるかもしれない

このような心理的安全性が低い状態では、失敗しないことが目的になってしまいがちです。とくに幼保施設では、子どもたちへの失敗は、生命や身体の危険に直結する恐れもあります。

しかし、その上で、一度何のためにやっているのかを考えてみることは重要です。
1番大切なのは子どもたちの成長に貢献すること、と目的が変われば、行動も自ずと変化してくるかもしれません。

組織やチームのミッションを明確にする

日々の仕事に追われていると、ただただ目の前にある仕事をこなすことに目がいって、働きがいややる気を無くしてしまうケースも起きてしまいます。

園の組織として、

・社会にどのように役に立っているのか
・つくりたい世界はどのようなものか

このようなミッションを、社会と園内に向けてしっかりと発信することが大切です。

・園やチームが、メンバーに分かるように仕事の目的と意味を伝える
・メンバーは、自分自身で仕事の目的と意味を生み出す

ことで、何を何のためにやっているかを理解でき、仕事のやりがいがアップしていきます。
常に、目的と意味を先に考える癖をつけることで、仕事の効率も質も飛躍的にアップしていきます。

多様性

近年、多様性という言葉を耳にする機会が多くなりました。
そもそも多様性とは、性質の異なるものが一緒に存在すること。つまり、あなたはあなたのままで良いという多様性が認められる環境があれば、心理的安全性は高まります。

多様性は外見や、人種、性別のような分かりやすいものから、宗教観、考え方などの内面に至るまでさまざまなものが要素としてあげられます。

特に目には見えづらい、考え方、意見の違いも多様性の要素です。この多様性を受け入れ、歓迎することで、心理的安全性が高まります。

多様性のある状態になると

メンバーが多様性を受け入れた状態になると

・視野が広がり、幸せや成長につながる
・なんでも話せる雰囲気になり、関係性が高まる
・大局的、客観的にものごとをみることができる

というようなメリットが生まれます。

自分とは全然違う人の価値観や考え方に直面しても、「知らない」という理由で怖がらないことが重要です。

多様性のある組織、チームは生産性が高い

研究によれば、上で述べたような多様性のメリットは、組織やチームに高い価値を作り出し、生産性を高めます。

自分は自分のままで良い、自由に発想して、自由に発言してよい、ほかのメンバーもその人らしくていい

という根本的な考え方は、心理的安全性の考え方にそのまま通ずるところがあります。

多様性を高めるためには、以下の4つのポイントを意識してみてください。

・「みんな同じでなければいけない」を手放す
・「平等でなければいけない」を手放す
・「空気を読まないといけない」を手放す
・自分のニーズに気づき、表明する

強み

日本では、自分の弱い部分、弱点を指摘されることがとても多いです。


弱点克服、穴をなくす、という考え方も一つの方法ですが、
周囲に弱みを指摘され続けると、「自分には大した価値がない」と思ってしまうことがあります。
そのため、価値がないと思われないように、失敗してはいけない、という形で不安が高まり、挑戦できない心理的安全性の低い状態になってしまいます。

しかし、誰にでも強みと弱みがあり、見方によっても強みにも弱みにもみることができます。
同じことをどう受け取るかは自分で決めることが可能です。

自分が持っている価値観のフィルターを、弱みを見るためのものから、強みを見るためのものに変更することがおすすめです。

フィルターを変えるだけで、自分に対しても、相手に対しても、関係性がよくなって、生産性を高めることができるようになります。

能力の強みではなく、性格の強みをみる

能力を褒められると、少しでもできない可能性があった場合、不安になります。そして、行動の目的が「人に認められたい」ということになってしまいます。

そこで、性格の強みに注目してみましょう。

性格の強みを「知る」だけで、約10倍、その強みを「使う」と18倍も人は幸せになれる、という研究結果があります。

自分の性格の強みを理解すること、他人の性格の強みを見つけることが大切です。

性格の強みを見つけると、最小の力で最高の自分が作れる

性格の強みを使うと、次のようなメリットがあります。

・自身の一部、アイデンティティになる
・日常の中であまりにも簡単に発揮される
・使えば使うほど気分が高揚して元気になる

性格の強みは自分の一部で、簡単に溢れ、使えば使うほどエネルギーが湧くとしたら、最小の力で最高の自分になります。

「仕事は我慢して対価をえるもの」

という価値観ではなく、

「こんな簡単なことでお金をもらってもいいの?」

と思えるものこそが、実は自分が社会で活かせることであると気づいた時、自分の人生への取り組み方が180度変わるかもしれません。

他人の強みを見つける方法

強みには、あらゆる人との関係をよくするという研究結果があります。
自分の強みをみてくれる人に、好意を抱くのは当然の帰結です。

互いの強みに注目して、認め合うと良い関係性が作れます。

そこで、他人の強みを見つけて伝える方法をご紹介します。

・相手の強みを観察して、名前をつける
・なぜそれが強みだと思うのか伝える
・その強みが自分に与える影響を伝え、感謝する

このプロセスで、相手の強みを見つけていくことで、職場内でも人間関係は格段によくなります。是非園でも、ワークなどで取り入れてみてはいかがでしょうか。

自分が好きではない、楽しくないことは強みではない

好きではなくても、周囲から褒められ、その期待に答えようとしてきたことが強みに見えてしまうこともあります。

どんなに得意で、人から望まれ、社会に役立つことでも、自分自身が熱意を感じられないことは偽りの強みです。

得意かどうか、より、好きかどうか、楽しいかどうかにフォーカスを当ててみてください。

まとめ

心理的安全性を高めるための考え方や方法についてご紹介しました。
毎日の少しの心がけから、職場での心理的安全性は高まっていきます。

また、この方法は大人だけではなく、子どもたちにも使うことができます。
自分の周囲全てに使える方法ですので、是非幼保施設での仕事に活用してみてください。

この記事内の一つでも何か実行できるものを見つけて試していただければ幸いです。

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この記事を書いた人

株式会社シェンゲン執行役員、人事責任者
「保育のカタチ」事業責任者、採用支援コンサルタント

前職ではリクルートの代理店にて、7年間1,000社以上の採用支援を担当。シェンゲン入社後は、幼保業界の「人」に関する問題解決に特化した専門家集団「保育のカタチ」を立ち上げ、事業責任者として従事。

保育園の統括マネージャーとして運営にかかわりつつ、保育士転職サービスでのキャリアサポートや、保育園への採用コンサルタントも行う。

採用活動を内製化する伴走型の採用支援や保育士向けの研修、紹介予定派遣などのサービスを公共機関や幼保施設の運営法人に向けて提供中。祖母、母、妹が保育士という保育士一家で育った。

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