【経営者・採用担当者必見】76年ぶりの配置基準変更で、幼保施設はどう変わる?

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目次

はじめに

2024年度から、保育士の配置基準が76年ぶりに見直されます。

今回の変更は、保育士の働き方改善や保育の質向上を図ることが目的です。しかし、保育士不足や施設の規模差など、課題も残されています。

本記事では、保育士の配置基準変更の概要や背景、変更までの経緯、2024年度からの具体的な対応策、新制度が保護者に与える影響などについて、詳しく解説します。

変更の概要(現行の制度と新制度の紹介)

現行の配置基準

現在の幼保施設の保育士配置基準は、

・0歳児:子ども3人につき保育士1人
・1・2歳児:子ども6人につき保育士1人
・3歳児:子ども20人につき保育士1人
・4歳児・5歳児:子ども30人につき保育士1人

となっています。

現在の制度では、時代とともに変化する保育士の業務に配置基準が追いつかず、保育士の負担が大きいなど、子どもの安全や保育の質が確保できないという課題があり、現場からは長年改善の要望が出ていました。

自治体独自の基準を設置しているところも

国の基準よりも手厚く配置基準を設置している自治体もあります。
たとえば、埼玉県の富士見市では、以下のような独自の基準を定めて、保育所運営を行っています。

埼玉県富士見市(公立・私立)
0歳児  3:1(国は3:1)
1歳児  4:1(国は6:1)
2歳児  6:1(国は6:1)
3歳児 13:1(国は20:1)
4歳児 18:1(国は30:1)
5歳児 25:1(国は30:1)

このように、保育士1人に対しての配置基準については、現場の状況や時代の変化によって、より変更の機運が高まっていました。

厚生労働省や新設された子ども家庭庁も、この問題は認識していましたが、ようやく次年度の予算に盛り込まれることが決定した、ということが昨年末にニュースになりました。

新しい配置基準

それでは具体的に、配置基準はどのように変わるのでしょうか。

変更点は以下の通りです。

新制度
・1・2歳児:子ども5人につき保育士1人(6人→5人へ)
・3歳児:子ども15人につき保育士1人(20人→15人へ)
・4・5歳児:子ども25人につき保育士1人(30人→25人へ)

上記が今回の変更点と言われています。

それでは、この変更によって、各幼保施設や子どもたち、保護者などにどの様な影響があるのでしょうか。

変更によってどのような影響があるのかそれぞれの視点から解説

保育園

人員(採用、配置変更、シフトなど)

この配置基準変更によって、今まで国の基準で運営していた保育園については、保育士の増員が必要になります。(※経過措置期間が設けられている点は後述します。)

例えば、3歳児が60人いる保育所では、保育士を3人置いていたところに4人配置が必要になります。

考えられるケースとして
・今まで保育士3名、無資格の保育補助1名で運営していた場合
→保育補助に保育士資格をとってもらう
→保育士を1名増員する
→シフトの調整でやりくりする

などの変更が必要です。

どのような変更が必要かは、実際の園の人員状況と照らし合わせて、個別に検討する必要があります。

仕事(役割分担、担任制度などの変更)

今まで1名で担任をしていた園については、複数担任制の導入を検討するなど、役割分担や運営方法を見直す必要が出てくる可能性もあります。

自園の運営にとって何が最適な仕組みなのかを今一度見直す必要があるといえます。

園の運営(増員できない園は受け入れの削減、閉園など)

無期限の経過措置期間があるとはいえ、最終的には配置基準が変更されることを考えると、もし増員ができなかった園については受け入れる園児数を減らして対応することになる可能性があります。

配置基準をクリアできなければ、園の評判が下がっていく可能性もあります。
そうなれば、最悪の場合、園児数と経営との兼ね合いで、閉園せざるを得ない保育所も出てくるかもしれません。

地域の子どもたちにとっては、閉園はデメリットになります。
今後に起きうる問題として、園の運営という点については課題になる部分です。

採用

各園が増員を検討する、ということで、さらに保育士の需要は高まることが予想されます。特に経過措置期間が終了する、というアナウンスがあった際には、各園が採用に殺到することになるでしょう。

さらに売り手市場が加速して、人材の流動性は高まるため、転職を防ぐために、新規採用と合わせて既存の職員の囲い込みを行う必要があるかもしれません。職員の待遇改善にはつながる可能性もありますが、人材の流動性が高まってしまうことで、子どもたちの保育には悪影響が出るおそれがあります。

市場が加熱する前に、先を見越して採用に動けるかが重要なポイントになります。
では今後、園側は具体的に増員に際してどのような対応策を取ればよいのでしょうか。

パートの保育士さんを配置して対応する

保育士の配置基準変更に伴って、保育園では基準人数を満たすように保育士の配置を変更する必要があります。
例えば、パートの保育士を増員して配置する方法があります。

この方法は、人件費などの運営コストは抑えることができますが、長く働いてもらうのは正社員に比べてハードルが上がります。

また、パートの保育士さんは、働ける日数や時間帯が限られていることが多いため、急なシフトの変更に対応できないという難しさがあります。

正職員を増やす

そこで、柔軟な配置が可能となる正職員を増員する、ということも考えられます。今後は少子化により、更に幼保施設が保護者から選ばれる時代になることが想定されます。
正職員を増員して、教育機会や研修の機会を増やし、保育園の質を向上していこうと考える園も増えてくる可能性があります。

保育園は園児・保護者からだけでなく、保育士からも選ばれる必要がある

保育士から選ばれる園になるポイントについては、以下の記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。

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保育士

待遇面

今回の配置基準変更によって、保育士の待遇は改善するのではないかと予想されています。国の補助の増加や、売り手市場により各施設が待遇の改善を行わざるを得ない状況になると考えられるからです。

仕事

今回の変更によって、あまり変化がない、というところと、業務の負担が減った、というところに2️極化すると考えられます。

例えば自治体独自の配置基準で運用されていた場合や、園の理念実現のために多めに保育士を配置しているような場合は、国の基準が変更になったとしても、現状がさして変わらない場合が想定されます。

業務負担が減ったと感じられるのは、現行の配置基準ギリギリの運用をしている園でしょう。

今回の変更では、基準の人数が大きくは変化していない、微減に止まっているため、引き続き海外並の水準に、と訴える人もいます。この点も課題となりうる点です。

転職

保育士の就転職について、保育士の求人件数は、2023年度に前年度比12.6%増加し、過去最高を更新しました。

配置基準の変更後はさらに保育士の需要が高まり、売り手市場が加速するとみられています。より条件のいい園に転職するなど、保育士が転職しやすい環境になると予想されます。

園としては、より保育士の働きやすい環境を構築し、現在の保育士に離れられないような園作りを目指しつつ、新たに保育士に選んでもらえる様な環境づくりが必要になります。

子どもたち

メリット

今回の配置基準変更は、子どもたちにとってはメリットになります。安全管理や危険への対処など、より子どもたちへの目が届きやすい状況になります。

デメリット

保育士の人材が流動化する、という予想の元、先生たちが入れ替わってしまう可能性があるのがデメリットとなります。先生が年度の途中で退職することで、子どもたちは非常に寂しい思いをすることになります。

愛着形成の視点からも、保育士の入れ替わりは極力少ない方が望ましいといえるでしょう。

保護者

メリット

子どもたちの安全がより担保される様な配置基準の変更は、保護者にとって歓迎すべきポイントです。

特に、保育園関係の事故のニュースは大きく報道されるため、保護者は自園の安全対策や管理について不安を抱くことも多く、配置基準の変更によって保育の質向上や子どもたちの安全がより守られることになるのは、保護者にとってメリットになります。

デメリット

人材の流動化や園児の確保の難しさによって、今子どもが通っている園が閉園するリスクが増すというデメリットが考えられます。特に2025年問題と言われるように、少子化により、園の経営がより難しくなることが想定されており、保護者としてはより保育園選びに慎重になる必要があります。

今回の配置基準変更後の課題

今回の配置基準変更については、紙面やネット上にも様々な意見が散見されます。どのような点が課題となるのでしょうか。

期限なしの経過措置期間で制度変更は骨抜きに?

配置基準変更については、政府は「当分の間は従前の基準により運営することも妨げない」という経過措置期間を無期限で付記しました。これには変更が骨抜きになってしまう、という課題も残ります。

そして、いつ経過措置期間が終わるのかが分からないため、園としては増員の計画を立てるのが難しくなります。

例えば、経過措置期間があるからと対応せずにいると、いざ経過措置期間終了のアナウンスがあった際にはすでに採用市場に競合が殺到していて、必要以上のコストや手間がかかってしまうという状況に陥ってしまうことも。

この状況を回避するには、競合が動き始める前から増員について計画し、動き出しておくことが重要です。

まだまだ海外基準に比べると、保育士の配置基準が緩い

今回の変更は76年ぶり、ということもあり、大きな一歩ではありますが、変更された基準についてはまだまだ課題も残されている、という意見もあります。
海外と比べた時に、まだまだ日本の配置基準が緩いという問題は引き続き課題としてのこります。

例えば、海外では、保育士1名あたりでみる子どもの数が、

・スウェーデンの場合:平均5.2人
・ドイツの場合:2歳児 終日利用:3.75人 半日利用:7人(日本は5人)
・アメリカの場合(州によっても異なる):
1歳半:5名
3歳:7名
4歳:8名
5歳:9名
・ニュージーランドの場合:
2歳児未満:5名
2歳児以上:10名

など、いまだ海外の水準とは開きがあるといえるでしょう。
もちろん、文化などの違いもあり、一概には言えませんが、より子どもを育てやすい環境を整えるためには課題として残る部分ではあります。

園の存続に関わるリスク

少子化や、2025年問題などもあり、幼保施設は淘汰の時代がやってくると言われています。現在も統廃合が進んでいたり、定員割れが起きている状況で園の経営が悪化すれば、当然閉園という選択肢を選ぶ施設もでてきます。

そうなると、子どもたちや保護者にとっては保育を受けられないリスクが高まってしまいます。

今回の配置基準変更は、自園のあり方を見直す機会として、園の今後についてしっかりと計画をしていくことが重要です。

現場の仕事が逆に増えるリスク

増員などで、一時的に研修など、現場の仕事が忙しくなる可能性があります。現場に余裕がなくなれば、人間関係の悪化、退職のリスクが高まります。園としてはマネジメントにさらに力を入れなければならなくなるかもしれません。

幼保施設のマネジメントについては、以下の記事も合わせて参考にしてみてください。

保育のカタチが予測する今後の展望

保育のカタチでは、過去に制度変更があったときの業界の動きなどから総合的に考え、1〜3年のスパンで緩やかに各園が増員をしていくのではないかと予測しています。

経過措置期間終了のアナウンスがあった場合などは、採用市場が高騰するため、法人の体力が少ない園ほど、早めに対策をとっていく必要があります。

その時に重要になるのは採用計画や採用方法についてのノウハウ。

保育のカタチでは、1000社以上の採用支援経験のあるコンサルタントがいつでも無料でご相談に乗らせていただいています。

今までハローワークから応募が来ていたからいいや、などと考えていると、あっという間に条件勝負で負けて採用に困ることが想定されます。

もし、今後の増員計画をどう立てていいか分からない、という法人の方は、ぜひこの機会に一度、保育のカタチの無料相談をご活用してみてくださいね。

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この記事を書いた人

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