はじめに
みなさんの園でも、園児を募集する際には、マーケティングを行い、市場の分析や立地などを考えて戦略を設計していると思います。
しかし、こと採用活動になると、漠然と求人票を作成して募集を出しておけば応募がくる、と思っている採用担当者や経営陣は少なくありません。
この記事では、採用活動をより効果的に行うために必要な、マーケティングの考え方や手法の基礎をご紹介します。
この記事を読むと、「ターゲットに効果的に刺さる求人の作り方」が見えてきます。
是非参考にしてみてください。
前提として、採用ターゲットが明確である必要があります。
この記事で採用ターゲットについて紹介していますので、
こちらも併せてお読みください。
幼保施設の採用にもマーケティングの考え方が必要な理由
なぜ幼保施設の採用にもマーケティングの考え方を取り入れる必要があるのでしょうか。
理由は2つあります。
・全体的な視点:圧倒的な「売り手市場」
・局地的、相対的な視点:競合園の存在
です。
理由1:圧倒的な「売り手市場」
全体的な視点として、現在の幼保施設の採用状況は圧倒的な売り手市場です。
時期や地域にもよりますが、有効求人倍率が5倍近いところもあります。
採用活動の成功のためには、この売り手市場の中で、
自社の魅力を的確に伝えて、求職者からこの園で働きたい、と「選ばれる」必要があります。
理由2:相対的な視点として、競合園が存在する、ということです。
幼保業界の採用活動では、自園の条件やアピールに目が行き、競合園の存在を忘れてしまっていることが散見されます。
例えば、近隣のエリアでほぼ同じ内容の求人を競合園が出していたとします。
そうすると、全ての条件で競合園と真っ向勝負をすることになり、応募者の取り合いになってしまいます。
もしライバルが存在しない場所で採用活動ができれば、効率もコストも削減する事が可能です。
競合園を分析する事で、競合園が訴求できていない求職者に気づき、
自園が効果的に採用を進める事ができるかもしれません。
以上のように、採用活動でも競合を意識したマーケティング思考が必要になってきます。
採用マーケティングの考え方を導入するメリット
採用マーケティングの考え方を導入すると、以下のようなメリットがあります。
・応募者数の増加
・採用ミスマッチが減る
・採用効率アップでコスト減少
応募者数の増加
採用マーケティングをすることで、
・ターゲットの明確化
・潜在層の発掘
・ターゲットに合わせた効果的な訴求
をすることができます。
そうすると、採用母集団の数が増え、増えた母集団に効果的な訴求をすることで応募率があがります。
その結果、応募者数の増加につながります。
採用のミスマッチが減る
マーケティング思考を採用するにあたって、幼保施設は自社の魅力を深掘りすることになります。
自社の魅力をターゲットに効果的に伝える事で、採用のミスマッチが減り、定着率の増加にもつながります。
採用効率アップでコスト減少
採用活動において、求人広告などの掲載サービスを利用して応募が来ない場合は、人材紹介やエージェントサービスなどの高額サービスを利用せざるを得なくなり、採用コストが高くなりがちでした。
マーケティングをうまく活用すれば、掲載サービスにおいてのターゲットの応募率が高まります。効率よく採用目標を達成する事ができるようになるため、採用コストが減少します。
実際のマーケティングのフレームワーク
では実際にマーケティングとは何をどのようにすれば良いのでしょうか。
マーケティングの際によく使われるフレームワークには、
・3C分析
・STP分析
・4P分析
・SWOT分析
・5F分析
など、多様なフレームワークが存在しますが、
この記事においては、以下の3C分析と4P分析を紹介します。
マーケティング戦略を検討する際に用いられる手法ですが、採用マーケティングにおいても効果を発揮します。
3C分析
3C分析は、「市場(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の頭文字を取って
3C分析と呼ばれています。
採用においては、以下の3つに置き換えることができます。
・市場=求職者の求めていること
採用活動において求職者が何を求めているかを理解することは非常に重要です。
・競合=競合園、あるいは同資格を必要とする別事業(ベビーシッター、ベビーホテルなど)の強み、弱みなど
・自社=自園の強み
求職者にアピールできるポイントのことです。
自園の理念から、具体的な働き方まで洗い出します。
幼保施設の求人ではこう活用する
競合の強み、弱み、自園の強み、弱みを洗い出したら、どの強みを求職者にアピールするかを選択します。
特に、競合の弱みと自園の強みが重なっている部分は、求職者にとっては、自園が独占できるポイントですので、特に注視しましょう。
例えば、競合は駅から遠く、自園は駅から近い場所の場合、通勤アクセスの便利さは求職者にとっては有効なアピールポイントとなります。
また、競合の弱みを自園の工夫で強みに変えることも可能です。
例えば、競合がピアノが弾けることを条件に設定していた場合、自園ではピアノ技術は不要という求人設定を設けることで、競合との差別化が可能です。
ここでの注意点は、必ず求職者が求めていることを訴求すること。
求人原稿に一番初めに書くことは、自園の理念や長所ではなく、求職者が求めていることに対する答えです。
4P分析
「4P分析」とは、自社商品やサービスにまつわる4つのP、「Product(商品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の頭文字からとったものです。
Product(商品):幼保業界の採用にとってのProductとは、自園そのものといえます。仕事の内容、業種、働き方、仕事の魅力、園の理念、園でのキャリアパスなどです。
Price(価格):ここでのPriceは、求職者に提示できる給与、賞与や福利厚生、給与上昇モデルなどです。
Place(流通):採用活動のPlaceは、選考プロセスや面接力、求職者に対する対応など、幼保施設と求職者が出会う場所、きっかけ、接点などのことを指します。
Promotion(販売促進):どのような方法で求職者に自園の存在や、採用活動を伝えるかを指します。求人サイトの活用、人材紹介、社員からの直接紹介、自社HPでの採用など、求職者の流入経路のことです。
上記の要素を、求職者(ターゲット)視点、競合との比較の視点で洗い出します。
例えば、Productなら、
求職者(ターゲット)が求める働き方かどうか、ターゲットが魅力を感じる園か、などを具体的に洗い出し、
Priceなら、求職者(ターゲット)が求める給与体系か、競合と比較して適正か、などを洗い出します。
分析結果から訴求する際のポイント
洗い出した情報をもとに、求職者に訴求するための求人を作成します。
求職者に刺さる求人を作成するためのポイントをご紹介します。
ターゲットに対して、効果的な自園の強みをアピールする
ポイントは2つあります。
ポイント1:「この求人は私のための求人だ」とターゲットに思ってもらう内容を書くこと
ポイント2:「ここで働けば、私の課題が解決できる」とターゲットに思ってもらう内容を書くこと
ターゲットの求めていることに答える形で、自園の強みがアピールできれば、2つのポイントを抑えて応募を獲得する事ができるはずです。
競合分析により、競合が取りこぼしている潜在層にアピールする
例えば、競合の求人では、勤務時間帯の選択肢が9:00〜18:00の1つしかなかった場合、早朝が忙しい子育て中の求職者は応募することができません。
そこで、自園の勤務形態を調整し、11:00〜20:00などの勤務形態を作る事ができれば、子育て中の求職者を独占する事ができます。
このように、競合の情報を分析して、何か自園の求人で工夫ができるところはないかと検討することも重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。マーケティングの考え方を採用に持ち込む事で、より効果的に採用ターゲットに訴求でき、応募が増えるイメージが作れれば幸いです。
マーケティングのフレームワークは他にもさまざまな手法が存在します。
余裕があれば、自園に合った手法を探してみるのも良いでしょう。