近年、保育園で虐待が起こったという報道を耳にすることもあるでしょう。虐待は、子どもを預かる保育園において、あってはならない事象の1つです。虐待が明るみに出ると、保育園の運営も怪しくなるため、前もって防止策を講じることが重要です。
そこで、この記事では実際に起こった保育園における虐待の事例や、虐待を防止する方法を紹介します。保育士が虐待することなく、質の高い保育が提供できるような環境を作るためにも、ぜひ参考にしてください。
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引用元:保育のカタチ
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保育園での虐待による「不適切保育」とは?
こども家庭庁によると「不適切保育」とは、保育施設における虐待などと疑われる事案と定義されており、大きく次の4つに分けられます。
参照元:こども家庭庁「保育所等における虐待等の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」
・殴る、蹴る、強く引っ張る、投げ落とす、激しく揺さぶるなどの暴力をふるう
・動けなくなるほど拘束する
・口の中に食べものを押し込む
・部屋に閉じ込める
・ほかのこどもより厳しくするような差別扱いをする
・言葉で脅迫したり異常に激しく怒鳴ったりする
・「あほ」「ばか」などの屈辱的暴言を吐く
・子どもの失敗に対し「そんなこともできないの」と自尊心を傷つけるような言葉をいう
・子どもに拒否的態度をとったり無視したりする
・子どもの身体的特徴や嫌がるようなことをいう
・お漏らししても、服を汚しても世話をせず放置する
・体調を崩している子どもに必要な看護をしない
・食事やおやつを与えない
・子どもが泣き続けていても放置する
・部屋の外に締め出す
・他の子どもや保育士から虐待を受けているのを見ても放置する
・必要ない場面で子どもを下着や裸の状態にする
・必要もないのに子どもの性器を触ったり他の子どもに触らせたりする
・子どもの裸の写真を撮ったり見せたりする
・保育士の性器を見せたり触らせたりする
これらは、保育士が意図して行っている場合もあれば、認識せずに行っていることもあります。
ニュースにもなった保育園での虐待事件
実際にニュースにもなった保育園での虐待事件を3件紹介します。
事件①徳島県 佐那河内村の保育所
徳島県の村立佐那河内保育所(園児50人)で起こった事例は、以下のとおりです。
- 口から吐き出した食べものを無理やり食べさせた
- 机のうえにこぼした牛乳を紙片でかき集めてコップに入れて飲ませた
- 昼寝を禁止した
- 感染症にかからせようと症状がある別の園児の鼻水を体につけたり、キスをさせたりするなどした
- 理由もなくズボンを脱がせた など
虐待に関わっていたのは保育士5人で、そのうちの1人は「力のある先生の方針に逆らえなかった」と答えました。虐待を受けた子どもの中には、食事の時間になると動悸が激しくなり、激しく泣くなどの身体的変調をきたすようになったそうです。
参照元:読売新聞「吐き出した食べ物口に…保育士5人が虐待・不適切行為」
事件②静岡県 裾野市の私立保育園
次に、2022年に起こった裾野市の私立さくら保育園「1歳児クラス」での事例を紹介します。
- 足をつかんで宙づりにした
- ロッカーに入って泣いている園児を携帯電話で撮影した
- にらみつけ、ズボンを無理やり下ろした
- 宙づりにした後、真っ暗な排せつ室に放置した
- 「ブス」「デブ」と容姿をばかにした
- 手足口病の症状のある園児の尻をほかの園児に触らせた など
さくら保育園では暴行したとして保育士3人が逮捕され、その内の1人が罰金20万円の略式命令を受けました。7月時点で同僚保育士が上司に虐待行為を訴えるも園は市に報告せず、11月に報道されたことで明るみに出ました。
参照元:東京新聞「園児宙づり」虐待から1年、あの保育園は今… この声かけは不適切? 悩む保育士、萎縮や不安も
事件③愛知県 名古屋市の保育園
3つ目に紹介するのは、2023年名古屋市内の保育園でおこった事例です。認可保育園「ニチイキッズ長須賀保育園」と小規模保育事業所「保育ルーム ルナⅣ新栄」では、食事時に虐待が行われていました。
- 2時間以上給食を園児に食べ続けさせた
- 吐き戻すまで食べさせた
- 無理やり頭の向きを変えて給食を食べさせた
- 机や床に落ちた食べものを食べさせた
ニチイキッズ長須賀保育園では、2015年度にも口に食べものを押し込んだり、たたいたりした虐待で改善勧告を受けています。さらに、2023年7月の時点で運営法人側が虐待を把握していたにもかかわらず、改善されずにいたため、10月に市から改善勧告を受けました。
参照元:朝日新聞デジタル「給食に2時間、吐くまで食べさせる 名古屋市が保育園に改善勧告」
保育園で虐待が起こる理由
なぜ、保育園で虐待が起こってしまうのでしょうか。ここからは、保育園で虐待が起こる原因を紹介します。
「しつけ」と「虐待」が曖昧になるから
保育園で虐待が起こる理由の1つは「しつけ」と「虐待」の境界が曖昧になることです。
保育士にとって「子どもに礼儀やルールを教えるためのしつけ」と考えられる行為でも、暴言を吐いたり暴力をふるったりすれば、それは虐待であり子どもに身体的や精神的な苦痛を与える行為となります。虐待は子どもの人格形成に悪影響を及ぼし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
そのため、保育園ではしつけと虐待の違いを明確にし、保育士に適切にサポートや教育をすることが重要です。
保育士の業務負担が大き過ぎるから
保育園で虐待が起こるもう1つの理由は、保育士の業務負担が大き過ぎることです。
保育士は「責任や労働の重さの割に賃金が安い」「残業が多く休暇が取りにくい」などの理由から離職率も高く、常に不足しています。保育士不足により、1人の保育士にかかる業務負担が大きくなり、保育士の中にはストレスを抱えてしまう方も多いでしょう。
その結果、子どもにきつく当たったり不適切保育につながったりしています。
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保育園での虐待を防止する方法
では、どうすれば保育園での虐待を防止できるのでしょうか。保育園での虐待防止策を3つ解説します。
セルフチェックリストを活用する
1つ目の虐待防止策として、全国保育士会が作成した「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト」を活用することをおすすめします。
保育現場での1日の流れに沿った項目に対して、保育士が「していない」「している(したこのがある)」のどちらかにチェックしていきます。最後にチェック結果を集計すると、園児に対して「良い関わり」ができているかどうかがわかります。
チェック結果を冷静に受け止め、気付いたことや目標を書き記すことで虐待を防止し保育の向上へつなげられるでしょう。
保育士の業務負担を改善する
保育士の業務負担を改善することは、保育園での虐待を防止につながります。虐待が起こる原因の項目でも述べたように、保育士の業務負担が大きいことが虐待の原因の1つです。業務負担が軽くなれば、保育士も心身ともに余裕をもって子どもと接することができます。
保育士の業務改善への取り組みに関しては、こちらの記事でわかりやすく紹介しているので参考にしてください。
周囲に気を配る
保育士自身が虐待しないようにするだけでなく、周りで虐待がないか・ストレスを抱えている保育士はいないかなどを把握するようにするのも効果的です。
いかにもイライラしている、ストレスを抱えているような他の保育士をみかけたら、ぜひ声を掛けてあげてください。周囲の気遣いが虐待を防ぐきっかけとなることがあります。
保育園内の虐待に通報義務はある?
保育園内で虐待が行われているのを発見した際は、通報しなくてはいけません。
こども家庭庁が令和4年4月~12月に調査した結果、不適切保育の事実が914件、虐待が90件ありました。保育施設での子どもへの虐待といった「不適切な保育」への対応を強化するため政府が法改正を行い、令和7年度から通報義務を含む改正児童福祉法施行の予定となっています。
参照元:こども家庭庁「保育所等の職員による虐待に関する通報義務等について」
保育園で虐待の疑いを持ったときの対処法
保育園内で保育士が虐待をしている疑いが生じた場合は、児童相談所に通報しましょう。動画や録音などの証拠があれば信憑性が高まります。時間が経てば経つほど子どもへの被害が大きくなるので、できるだけ早く行動しましょう。
虐待行為を通報するのは勇気のいることですが、通報することで園児を守ることができます。
まとめ
保育園における虐待は、子どもの将来を左右しかねない大きな罪です。しかし、保育士による虐待は無くなりません。保育士が虐待をする理由として、業務量過多や「しつけ」と「虐待」が曖昧になることが挙げられます。
この記事で紹介をした対策を取り入れ、保育士が虐待せずに心から楽しみながら保育ができる環境を構築しましょう。
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