保育園の業務効率化がもたらす働きやすい職場づくり

保育士不足や多様化するニーズの中で、保育園の現場では多岐にわたる業務が絶え間なく発生しています。書類作成や保護者対応、行事の準備など、子どもたちと直接関わる以外にも多くの仕事があるために、保育士の負担は想像以上に大きいのです。

これらの膨大な業務を効率よく進めていくには、日頃から改善の視点を持ち、システムや仕組み自体を見直すことが不可欠です。労働時間の短縮や作業漏れの防止だけでなく、チーム間のコミュニケーションを円滑化するための取り組みも大きなポイントになります。

業務効率化が実現されれば、保育士一人ひとりが子どもと過ごす時間をより豊かにし、働きやすい職場をつくるきっかけにもなるでしょう。まずは現場でどんな問題が起きているのか、そしてそれをどう改善していけるのか、具体的に考えていきましょう。

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目次

保育園における業務改善の必要性と背景

保育士の業務が膨大化している背景や、その解消へのアプローチ方法を見ていきましょう。

保育園では、登降園管理や連絡帳への記入、さらに行事の運営や保護者対応など、つねに多様なタスクが同時進行しています。こうした業務量は、子どもたちの安全と成長を第一に考えるうえで欠かせないことも多く、完全に削減するのは難しい部分があるのも事実です。とはいえ、無駄をなくし、より効率的に作業を進める工夫をすることで、保育士の労働環境を整え、結果的に質の高い保育を実現できる可能性が高まります。

保育士不足と過多な業務量

保育士の慢性的な不足は、各職員が担う業務量の増加を意味します。例えば記録関連の書類だけでも、複数のファイルやシステムにまたがって情報を入力しなければならないケースが多く、作業の重複やミスの発生リスクも高まります。また、十分な人手が確保できないため、業務が各自に属人化しがちで、休暇を取ることへの心理的なハードルも上がりかねません。これらの状況を改善するには、園全体でタスクの分担を見直し、ICTなどを取り入れて作業の重複を削減することが重要です。

働き方改革の観点から見た保育士の負担

近年、保育業界でも働き方改革が叫ばれ、時間外労働の削減や柔軟なシフト管理への関心が高まっています。園全体で会議や書類作成の時間を効果的に設定したり、見直しやすい方法を導入したりすることは、保育士一人ひとりの負担軽減につながります。また、情報共有の仕組みをスムーズ化することで、個々の作業時間を短縮し、保育中のコミュニケーションロスを減らすことも可能です。こうした改革を実施することで、離職防止や保育サービスの質向上にも寄与していくでしょう。

業務効率化のための4つの原則

保育現場で無駄を省き、作業を円滑にするための基本的な視点を解説します。

保育園の業務を見直す際に役立つ考え方として、ECRS(排除、統合、交換、簡易化)の手法が知られています。これは単に作業を減らすだけでなく、連携や仕組み自体を工夫することで、業務を抜本的に効率化していくというアプローチです。以下の4つの原則を踏まえて具体的な改善策を検討すると、保育士の負担を大きく和らげる効果が期待できます。

1. プロセスの可視化とタスクの整理

まずは、日常的に行われている業務をリストアップし、スケジュールや手順を明確にするところから始めます。そのうえで、作業の優先度をつけたり、誰が何を担当するかを見える化することで、重複や抜け漏れを防ぎやすくなります。適宜ホワイトボードやタスク共有ツールを用いると、外出先でも情報確認ができ、チーム全体の連携を強化する効果もあります。

2. ICTの活用による省力化

書類作成や勤怠管理、園児情報の更新などをデジタル化することで、時間的コストを大幅に削減できます。紙や手書きで行っていた作業は、ICTシステムを導入することで重複入力やファイリングのミスが格段に減り、検索性も高くなります。また、保護者との連絡や情報交換をオンライン化することで、職員同士のやりとりもスピーディーになり、業務効率がさらに向上します。

3. チーム力の強化とスムーズな情報共有

一人一人が孤立して作業しないよう、こまめな朝礼や共有ファイルの活用など、コミュニケーションの仕組みを整えることが重要です。必要な情報がリアルタイムで共有されれば、保護者対応や業務の引き継ぎが格段に円滑になります。同時に、雑務や行事対応などもチーム全体で役割分担を知ることで、どの業務が滞っているかを早期に把握し、フォローし合えるようになるのです。

4. 必要に応じたアウトソーシングや保育補助者の活用

保育に直接関係しない一部の事務的作業や雑務をアウトソーシングしたり、補助者となる人材を活用することも一つの方法です。例えば、保護者からの問い合わせ対応や物品管理などを専門業者に委託することで、保育士は子どもたちをケアする時間と意識を確保しやすくなります。また、保育補助者を導入し、行事の準備や日々のサポートを手伝ってもらうことで、職員同士のシフトをより柔軟に組むことも可能になります。

具体的な業務改善アプローチ

効率化を実現するため、実践的な取り組みやシステム導入の方法を紹介します。

実際の保育業務を自然に減らすことは容易ではありませんが、テクノロジーや新しいツールの導入によって大幅な時短を実現する事例があります。また、アナログの作業を徹底的にデジタル化するにあたっては、初期投資や運用コストなどの懸念があるものの、長期的に見ると職員の作業負荷を減らし、ミスを防止する効果が高いとされています。以下では、現場で取り組みやすい具体策をご紹介します。

ICTシステム導入による書類・記録の効率化

日々の連絡や園児の記録をパソコンやタブレット、スマートフォンのアプリで一元管理することで、作業の重複を減らせます。紙に記録していた園児の情報や保護者からの申し送り事項をデジタル化すれば、検索機能が使えるため必要な情報にすぐアクセス可能です。さらに、保育計画や行事スケジュールをクラウド上で共有することで、職員間の連携ミスを防ぎ、記録のバラつきも抑えることができます。

日誌・連絡帳と発達記録のシステム化

保護者との連絡帳や子どもの発達記録を一つのシステムにまとめると、確認作業や重複した記入の手間が削減されます。これにより、進捗状況がひと目でわかり、保育計画の調整や保護者へのフィードバックを迅速に行えるようになります。また、システムが自動でバックアップを取ってくれるため、紙の書類を紛失するリスクからも解放され、よりセキュアな運用が可能です。

データ管理のセキュリティ対策と留意点

保育士や子どもの個人情報が含まれるデータは機密性が高いため、セキュリティ対策を万全にしておく必要があります。強固なパスワード管理やアクセス権限の制限、定期的なシステム更新など、ICT導入で得られる利便性と安全性を両立させる仕組みを整えることが重要です。加えて、職員全員が基本的なリテラシーを身につけることで、利用時のトラブルを未然に防ぐことができます。

保育施設の管理者が身につけたい問題解決能力

現場を管理する立場から、業務改善を成功させるために必要な能力について考えます。

保育園全体の仕組みを俯瞰し、どんな課題があるのかを正確に捉えられる管理者がいるかどうかで、改善のスピードは大きく変わります。単発の対策だけでなく、長期的なビジョンを持ち、働きやすい職場づくりの土台を築くことが重要です。ここでは、特に注目したい三つの力を取り上げます。

本質理解力:課題を掘り下げる力

保育園で生じている問題は、単に書類が多い、時間が足りないという表面的なものだけではありません。例えば、園児数や職員のスキルセット、保護者からの要求レベルなど、さまざまな要因が重なっているケースが多いのです。管理者は職員の声や実際の業務フローに目を向け、どこに根本的な課題があるのかを掘り下げることで、最適な解決方法を導き出せます。

優先順位を決定する力:限られた時間を有効活用

保育園では日々の業務の中でも緊急度や重要度が異なる仕事が山積みです。管理者は、全体目線で優先度を判断し、限られたリソースをどの業務に割り振るべきかを決定します。無理にすべてを同時に解決しようとするのではなく、最も効果が出る部分から取り組むことで、成果を早期に出しやすく、職員のモチベーションを維持しやすいのが特徴です。

チームで衆知を結集する力:現場の声を反映

保育士一人ひとりが抱えている日常の小さな気づきや工夫こそが、大きな改善のきっかけになることがあります。管理者はチーム内の意見を集め、さまざまな視点から問題を分析して、より良いアイデアを取り入れる姿勢を持つことが求められます。上下関係に関係なく発言しやすい雰囲気をつくることで、組織力が高まり、スムーズに改革を進めることができるでしょう。

保育士の負担軽減・業務効率化につながる仕組みづくり

保育園全体の仕組みとして、具体的な方法やシステムを整備し、持続的な効率化を図ります。

効率化を一過性の取り組みで終わらせないためには、園全体のルールや仕組みをしっかりと策定することが大切です。ICTシステムに保育業務の流れを組み込み、スタッフで情報を共有しやすくすることによって、継続的に業務改善が行いやすい環境が整います。

導入例:保育DXシステムによる省力化

保育DXシステムとは、登降園の管理から請求業務、さらには子どもの発達記録などを一元的に管理できる統合ソリューションです。これを導入することで、紙ベースの伝票や帳票を削減でき、園児の情報がリアルタイムで共有されるようになります。また、シフト作成やタスク管理も自動化されているため、二重入力やチェック作業が軽減し、保育士の作業効率が大幅に向上すると期待されています。

ICTによるコミュニケーションの改善と保育の質向上

ICTがもたらす利点の一つに、情報共有の速度と正確性が挙げられます。例えば、保護者への連絡をオンラインで一本化すれば、紙の連絡帳に比べて伝達ミスや紛失のリスクを大幅に減らせます。さらに、職員同士が子どもの発達状況を迅速に共有できるようになると、サポートの方向性が一致しやすくなり、各保育士が同じ目線で子どもの育ちを支援できるようになる点が大きなメリットです。

まとめ:業務改善で実現する保育士と子どもの豊かな時間

業務改善によって確保された時間や余裕は、保育士のモチベーション向上だけでなく、子どもの成長にも大きく貢献します。

保育園での業務効率化には、単なる作業量の削減だけでなく、チームワークやコミュニケーションの改善を含む総合的な取り組みが求められます。ICTシステムの導入やタスクの可視化、そして保育士同士の連携強化を進めることで、より豊かな保育の時間を生み出すことが可能です。

こうした改善により、職員が前向きに働ける土壌が育まれ、子どもたちに対してもきめ細やかなケアを提供しやすくなります。結果として、保育の質が高まり、保護者との信頼関係もしっかりと築けるようになるでしょう。業務効率化は働きやすい職場づくりの要であり、保育士と子どもの双方の幸せを支える重要なカギとなるのです。

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この記事を書いた人

株式会社シェンゲン執行役員、人事責任者
「保育のカタチ」事業責任者、採用支援コンサルタント

前職ではリクルートの代理店にて、7年間1,000社以上の採用支援を担当。シェンゲン入社後は、幼保業界の「人」に関する問題解決に特化した専門家集団「保育のカタチ」を立ち上げ、事業責任者として従事。

保育園の統括マネージャーとして運営にかかわりつつ、保育士転職サービスでのキャリアサポートや、保育園への採用コンサルタントも行う。

採用活動を内製化する伴走型の採用支援や保育士向けの研修、紹介予定派遣などのサービスを公共機関や幼保施設の運営法人に向けて提供中。祖母、母、妹が保育士という保育士一家で育った。

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