幼保施設の新卒を即戦力にするポイント

目次

はじめに

幼保施設にも、園の規模や方針によって、様々な採用の形があります。
一般的なところでは、やはり小規模の園では中途採用がメインで、大規模園では新卒の一括採用を行う、など、規模感の大きなところは新卒を大量に採用して、小規模園では中途採用を行う、というものです。

また、新卒採用は長期的な戦略に基づいて、理想の園や組織を作るためのもの、中途採用は、オペレーションの改善や欠員の補充など、短期的な視点でされるもの、という認識が一般的です。

そのため、新卒採用は育成重視、中途採用は即戦力、というターゲット設定になっています。

この記事では、従来の採用に対する視点が正しい、間違っている、という話ではなく、従来の常識を見直す、ということも必要な視点ではないかと考え、その視点を踏まえながら、幼保施設の新卒を即戦力にする方法をご紹介していきます。

小規模園でまだ新卒採用をしていない採用担当の方、新卒採用も長期の育成枠として、長い目で育てばよいと考えている中規模以上の園の方に気づきを与えられるような内容になれば幸いです。

新卒が即戦力化できない原因

新卒が即戦力化できていない原因として、

・入り口での吟味不足
・即戦力化できないという思い込み
・そもそも優秀な人材は自園を選ばないという思い込み
・自社の育成体制の不備

が挙げられます。

全国規模の幼保施設は、組織としての採用の準備が整っています。
そのため、採用に対するビジョンが小規模の幼保施設と根本的に異なり、自園の理念を将来的に形にできる人材を採用します。

ところが、小規模園の中には、現場のオペレーションをしてくれるだけで良い、と考えているところもありますし、実際には将来の園のビジョンを実現できる人材が欲しいと思いつつも、そのような優秀な人材が自園に来るわけがないという諦めを持って採用活動を行っている園もあります。

オペレーションをやってくれれば良い、という目線での採用は、質の部分で妥協してしまいがちです。
主に、採用活動をしっかりやる時間もコストもない、というのが主な理由です。

しかし、自園のビジョンや理念への共感の薄いままオペレーションに入ることになるので、離職のリスクが高まります。
結果、採用活動を行う頻度が増え、採用コストも既存社員のコストも増えるという悪循環に陥ってしまいます。

本来であればそのような園こそ、採用人材の「質」にこだわる必要があります。
(ここでの質、とは、出来不出来、ということではなく、自園のカルチャーや求められるスキルにフィットするか、ということです。)

採用活動に力を入れた時のメリットデメリットと、離職して再度採用活動を行わなければならないときのメリットデメリットを比較すれば、過去の常識を捨てて前向きに採用活動に取り組むべき理由がお分かりになるかと思います。

また、今後将来において、少子化により幼保施設そのものの需要は相対的に低下していきます。国の配置基準等に変化がなければ、幼保施設は淘汰、統合が今後さらに加速することになります。サービスの質にこだわらない園はどんどん淘汰されていきます。園の生き残りを考える上でも、優秀な人材を採用することがより求められるようになります。

難しいチャレンジですが、園の将来のために、高い目標を掲げて早期に始めることが重要です。

新卒から即戦力になれる人材とは

新卒段階から即戦力になれる人材に共通するポイントはどのような部分でしょうか。

・自分の頭で考え、課題解決ができる
・仕事をしながら自ら求め、吸収し、考え、行動に移せる
・素直
・野心がある

このような、自身でクリエイティビティを発揮できる人材であれば、新卒でもぐんぐんと成長し、早期に即戦力となって活躍してくれる可能性が高いです。

ただし、優秀な人材は、自身で業界のことを調べ、有望な園を選び、自発的に就職活動をスタートすることになります。

例えば小規模園で新卒採用を行う場合、すでに早期化している大規模園の新卒採用よりも先に、優秀な学生に自園を見つけてもらわなければ、大規模園に囲い込まれてしまうという恐れもあります。

新卒の即戦力化のポイント

新卒を即戦力化するうえで、採用段階から質にこだわった採用をする、というのは上述の通りですが、優秀な人材を採用するために押さえておくべきポイントをご紹介します。

採用段階

採用段階で意識すべきポイントは、とにかく早い段階からアプローチをする、ということにつきます。例えば大規模保育園では、大学生の3年次にすでに内定が出ているようなところも存在します。

そんなに早期から動いても、学生が本腰でなく、無駄になってしまうと思われるかもしれませんが、まずは自園のことを知ってもらうことが何より重要です。いざ本腰を入れて就職活動を始める際に、既に知っているところとこれから調べるところでは、候補に入れるかどうかの部分において大きなアドバンテージを得ることができます。

学生に重いと思われてしまうのは怖い、ということであれば、ライトに参加型などのワークショップ付きイベントなどから始めてみてはいかがでしょうか。

内定段階

優秀な人材を即戦力化する、という目標を立てると、内定期間中に新卒を育成することが非常に重要になります。

優秀な人材は、常に成長したい、という意欲を持っています。
内定人材を放ったらかしにすることなく、内定中の育成プログラムを作成して、その期間中に育成を進めた後、4月の配属前に2、3ヶ月現場に慣れてもらうという仕組みで、4月からすぐに活躍できるように社内の研修を進めてみてはいかがでしょうか。

即戦力人材を採用する4つのポイント

人に合わせた基準ではなく、理想の基準に合う人を採用する

優秀であっても、自園のビジョンや理念と合わない人材は後々離職のリスクが高まります。人に合わせて自園のやり方を合わせていくのではなく、理念やビジョンに共感する人を採用する、という順番を意識する必要があります。

あくまでも採用活動は自園をより強くするための「補強」であり、穴埋めの「補填」ではない、ということです。

内定期間中の育成プランを明確にする

園の将来像から、採用した人材に入社日以降どのような仕事をして欲しいのかを考えて、逆算で育成プランを作成し、明確にします。
もちろん、無給でという訳にはいかないので、アルバイトとしての報酬を支払うのは必要ですが、プランを明確にしてPDCAを回すことで、社会人としての生活に内定期間で慣れてもらうことは重要です。
このステップを踏むことで、入社時から活躍できる人材に育成していきます。

新卒を即戦力にするという文化の醸成

新卒が育つには3年かかる、とよく言われますが、本当でしょうか。この思い込みがあると、新卒を育てるのに3年かけてゆっくりやろうという文化になってしまいます。この思い込みをなくすには、社内の文化を変える必要があります。

まずは経営者がその考え方を変えると宣言すること。実際に取り組みで少しずつでも成果を出すこと。この文化が定着することで、既存の社員にも変化が生まれ、組織としての良い循環をつくることができます。

このようなトップダウンの施策では、経営陣が粘り強く、本気で取り組むことが何よりも重要です。ただ宣言するだけではなく、育成の成果自体も評価制度に組み込むなど、新卒育成が重要な業務だということを仕組み化することが必要です。

採用チームをスカウトチームへ

単純に就活時期だけではなく、さらにその前から学生にアプローチする、という、超早期の採用活動の発想があっても良いでしょう。
なぜなら大手の活動は既に早期化を始めており、1、2年次から学生と接点を持っておくことは、小規模園にとっては非常に重要な施策になり得るからです。

また、1、2年次の学生に対しての採用活動は、数年先に必要となる人材を見極めることになるため、自園の中期戦略をしっかり想定しておく必要があります。これによって、自園の中期戦略を改めて見直すきっかけにもなります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。新卒を即戦力化するには、自園の中期戦略から、短期戦略、その実現に必要な人材と、明確な育成プランを持って望むことが重要です。

この実現には多大な労力やコストが必要かもしれません。
しかし、今後の園の将来を考えた際に、今のうちから準備しておくことは悪いことではないと思います。

是非この記事が今後の園の採用活動について考えるきっかけになれば幸いです。

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この記事を書いた人

株式会社シェンゲン執行役員、人事責任者
「保育のカタチ」事業責任者、採用支援コンサルタント

前職ではリクルートの代理店にて、7年間1,000社以上の採用支援を担当。シェンゲン入社後は、幼保業界の「人」に関する問題解決に特化した専門家集団「保育のカタチ」を立ち上げ、事業責任者として従事。

保育園の統括マネージャーとして運営にかかわりつつ、保育士転職サービスでのキャリアサポートや、保育園への採用コンサルタントも行う。

採用活動を内製化する伴走型の採用支援や保育士向けの研修、紹介予定派遣などのサービスを公共機関や幼保施設の運営法人に向けて提供中。祖母、母、妹が保育士という保育士一家で育った。

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