はじめに
多くの幼保施設の採用担当者が、選考プロセスをないがしろにしています。慣習やテンプレート通りの選考過程を実施して、自園の採用課題に対応しているとは言い難い状況です。
例えば、応募者数が少ないことに悩んでいるのに、手書きの履歴書を必須にしてみたり、内定の辞退者が多いのに、選考期間が長かったり。
選考プロセスの設計は、ターゲット(求める人物像)の作成などと比べて、地味な作業に思えるかも知れませんが、手をつけていなかった部分であるがゆえに改善の余地が大きいところです。
この記事を参考に、選考プロセスを改善して、採用効率のアップにつなげてみてください。
なぜ選考プロセスが重要なのか
それは、応募者に合った選考プロセス設計をしていなかった場合、
それ一つで応募を控える、または面接を辞退する理由になりえるからです。
例えば、自園のターゲット設定が完璧で、訴求について効果的にできていたとします。
しかし、選考プロセスが不合理だったら、せっかく集めた応募者は霧散してしまいます。
はじめに、で述べたような、園の採用の状況と、選考プロセスが合っていない状況になっていれば、採用活動はうまくいきません。
つまり、良い採用には、合理的な選考プロセスが欠かせないといえます。
選考プロセスの構成
選考プロセスは、「歩留まり」「ステップ」「コンテンツ」の3つで構成されます。
この3つの要素を自園の採用理念や採用環境、採用方針に合わせて決めることで、合理的な選考プロセスが設計できます。
歩留まりとは
「歩留まり」とは、選考プロセスの各段階で、候補者を次の段階に進める割合のことを指します。書類審査から1次面接への通過率は何%、1次面接から2次面接への通過率は何%というように、目安となる数値を決定します。
採用プロセスの改善にあたっては、過去のデータを参考に採用担当者が予測を立て、現在の状況のモニタリング結果と照らし合わせることで、どのプロセスに問題があったのかを改善することが可能です。
新しい園で過去のデータがない、あるいは今までデータを取っていなかった場合でも、現在の状況を知り、問題発見と今後の改善につなげるために、数字はデータとして残しておくのが良いでしょう。
ステップとは
「ステップ」とは、選考の回数や過程、実施期間などのことを指します。
コンテンツとは
「コンテンツ」とは、面接、筆記試験などの、選考に使うツールのことを指します。
ステップとコンテンツを設計する際のポイント
ステップとコンテンツを設計する際には、
「業界の慣習」や「採用の常識」にとらわれず、自園の採用課題にあった形を選択する事が最も重要です。
選考プロセスには本来、何の制約もありません。
意識すべきなのは、「何のために」このプロセスを実施するのかを考えることです。
目的のために不要であれば止めるなど、採用課題に応じたステップやコンテンツを選択することで、効果的な採用活動につながります。
具体的な状況を踏まえた選考プロセス設計のポイント
幼保施設によくある採用の悩みごとに、プロセス設計時に使えるポイントを紹介します。
前提として、採用ターゲットが明確で、求人の訴求もできているという状況で見ていただければ幸いです。
応募者が少ない
・応募者を増やすために、応募へのハードルを下げる。例えば、エントリーの際に履歴書が必要、という条件を緩和する、園見学必須という条件があった場合は止めるなど。
・採用手法を1つに絞らない、SNSや紹介など、さまざまなチャネルを用いて応募者を増やすことを考える
・欠員や人員不足の時のみ採用を考えるのではなく、常に窓口を開けておくことで採用候補を確保しておく
応募が多く絞りきれない、工数が多い
・書類選考の基準を厳しくする。エントリーの際の課題を難しくする。
・優秀だと思った候補に対しての飛び級的な選考過程を用意しておく。
・同時期に候補が多かった場合、期間を伸ばさないようにする。例えば、会議室の数が少なくて面接ができない、というようなことがないよう、面接場所を確保するなど。
(選考期間が伸びると優秀な人から辞退していく)
実際の事例(社会福祉法人の採用事例)
次に、選考プロセスを見直したことで、実際に応募者の量、質ともに改善した事例をご紹介します。
当初の採用課題
・応募者数が少なかった
・採用ターゲットと比較して有効な応募ではなかった
原因
採用ターゲットに選考プロセスが合っていなかった。
具体的には、
クライアントの従来の慣例から、エントリー時に履歴書の提出というプロセスを必須にしていたところ、採用ターゲットからの反応が良くありませんでした。
そこで、履歴書の提出というステップは変えずに、提出時期を面接時に変更することにしたところ、採用ターゲット層からの応募が2倍に増えました。
一見、こんなことで?と思われる方も多いかもしれません。
採用担当にとっては些細なことでも、応募者にとっては大きな問題だったということは良く見られます。
そのような時は、徹底的に応募者の視点に立って考えてみる、ということをお薦めしています。応募者の視点に立つことで、プロセスに対する園と応募者のギャップを減らすことが可能です。
この事例から、最初に述べたように、選考プロセスは改善の余地が大きいということがご理解いただけると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
選考プロセスひとつで、採用活動の成否は大きく影響を受ける可能性があります。
これは選考プロセスだけではなく、採用活動全ての局面において言える事ですが、採用課題について常に応募者の視点を忘れないようにしましょう。
この記事を参考に、園の採用活動において、今まで何となくで運用されてきた選考プロセスについて改善するきっかけにしてみてください。