【経営者・園長先生必見!】こども家庭庁令和7年度補正予算のポイント:保育事業関連のまとめ

目次

3分でわかるこの記事のポイント

  • 【処遇改善】
    人事院勧告に基づき、保育士等の公定価格(人件費)をプラス改定。令和7年4月に遡及して適用されるため、差額支給の事務対応が必要。
  • 【臨時加算】
    物価高騰対策として、令和7年度限りの「運営継続支援臨時加算(仮称)」を創設。保育所・認定こども園等は1施設あたり年額10万円を補助。
  • 【ICT・DX】
    「保育ICTラボ」事業や、翻訳機・登降園管理システムの導入補助など、業務負担軽減のためのICT支援が継続・拡充。
  • 【人材確保】
    資格を持たない「保育補助者」の雇い上げ支援や、潜在保育士の復職支援を強化。実習生受け入れや就職準備金の貸付も対象。
  • 【施設整備】
    こどものプライバシー保護(パーテーション設置)や性被害防止(カメラ設置)、防災・防犯対策への設備改修補助を用意。

はじめに:経営に直結する「お金」と「人」の施策を整理

こども家庭庁が発表した「令和7年度補正予算案」には、保育所の経営・運営にダイレクトに関わる重要な予算が計上されています。

特に今回は、昨今の急激な物価上昇への対応や、他産業に引けを取らない賃上げの実現など、園の存続に関わる支援策が含まれています。また、こども性暴力防止法(日本版DBS)の施行を見据えた安全対策や、さらなる業務効率化を目指すICT支援も見逃せません。

本記事では、11月28日の閣議決定を受けて、予算資料の中から、保育園・認定こども園等の経営者・施設長が押さえておくべきポイントを6つのカテゴリーに分類し、実務的な視点からご紹介します。

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1. 【最重要】職員の処遇改善(給与アップ)

保育士不足が深刻化する中、人材確保のための処遇改善は最優先事項です。今回の補正予算では、国家公務員の給与改定に連動した措置が講じられます。

公定価格(人件費)の引き上げ

令和7年の人事院勧告により、国家公務員の給与が引き上げられることを受け、保育士等の公定価格(人件費部分)も同様に引き上げられます。

改定内容

  • 月給(俸給): 若年層に重点を置きつつ、全職員の引き上げ(行政職平均3.3%増相当を反映予定)。
  • ボーナス(期末・勤勉手当): 年間支給月数を0.05ヶ月分引き上げ(4.6ヶ月→4.65ヶ月)。
  • 適用時期: 令和7年4月まで遡及して適用されます。
  • 実務対応: 公定価格の単価改定通知が届き次第、職員への遡及支給(差額調整)の計算と支給事務が必要になります。職員への事前説明と、スムーズな支給準備を進めておきましょう。

2. 物価高騰対策:運営継続のための緊急支援

電気代、ガス代、食材費の高騰は、保育所の経営を圧迫し続けています。これに対し、今年度限りの緊急的な支援策が打ち出されました。

運営継続支援臨時加算(仮称)の創設

質の高い給食や保育環境を維持するため、物価上昇分を補填する目的で創設された臨時的な加算です。

  • 対象施設: 認可保育所、認定こども園、幼稚園(新制度移行園)、小規模保育事業所など。
  • 補助基準額(案):
  • 保育所・認定こども園・幼稚園:1施設・事業所あたり 年額100,000円
  • 小規模保育・事業所内保育:1事業所あたり 年額50,000円
  • 家庭的保育・居宅訪問型保育:1事業所あたり 年額25,000円
  • 用途: 食材料費の高騰分や光熱費の支払いに充てることができます。令和7年度限りの措置であるため、年度内の経理処理が必要です。

3. 人材確保・定着支援:資格の有無を問わない採用戦略

有資格者の採用難が続く中、多様な人材を活用するための支援メニューが拡充されています。

保育補助者雇上強化事業

保育士資格を持たない「保育補助者」の雇用を促進し、保育士の業務負担を軽減する事業です。

  • 対象: 保育士資格を持たない職員の雇い上げ費用。

    ポイント
  • 無資格者: 清掃、片付け、寝かしつけの補助など、周辺業務を担ってもらうことで保育士が専門業務に集中できます。
  • 潜在保育士の復帰: 資格はあるが現場を離れていた「潜在保育士」が、まずは補助者として短時間から復帰する場合も支援対象となります(1年間限度)。
  • 補助額: 経験年数や施設規模に応じて加算されますが、例えば定員121人以上の施設で経験7年以上の補助者を雇用する場合、最大651万円(年額)の補助基準額が設定されています。

保育士修学資金貸付等の充実

これから保育士を目指す学生や、復職を目指す潜在保育士への貸付制度も継続されます。

  • 修学資金: 月額5万円に加え、入学・就職準備金各20万円。卒業後5年間の勤務で返還免除。
  • 未就学児を持つ保育士支援: 潜在保育士が復職する際、自身の子どもの保育料の一部を貸付(2年勤務で免除)や、ベビーシッター利用料の半額支援などがあります。

4. ICT化・DX推進:業務負担軽減の切り札

事務作業に追われ、こどもと向き合う時間が削られる現状を変えるため、ICT導入支援がさらに強化されます。

保育所等におけるICT化推進等事業

  • システム導入補助: 登降園管理、日誌・計画作成、保護者連絡、キャッシュレス決済などの機能を持つシステム導入費を補助。
  • 翻訳機導入: 外国籍のこどもや保護者が増えていることを踏まえ、多言語対応の翻訳機やタブレット等の購入費も補助対象です(1施設15万円など)。
  • こども誰でも通園制度対応: 新制度の実施に伴い必要となる予約管理システムや入退室管理用タブレットの導入にも補助が出ます。

「保育ICTラボ」事業

単なる機器導入にとどまらず、ICTをフル活用して業務改革に成功しているモデル園(ショーケース)を作り、そのノウハウを地域に広める取り組みです。先進的な園の見学会や、ICT活用の伴走支援を受けるチャンスがあります。

5. 施設整備・安全対策:選ばれる園づくり

こどもの安全を守る設備投資や、老朽化した施設の改修に対する補助も手厚く用意されています。

性被害防止対策・プライバシー保護

日本版DBSの議論の中でも重視されている「こどものプライバシー保護」や「死角の解消」に向けた改修支援です。

対象設備

  • こどもの着替えスペースへのパーテーション、簡易扉、簡易更衣室の設置。
  • 保育室内の死角をなくすためのカメラ、人感センサーライトの設置。
  • 補助額: 1施設あたり10万円以内。
  • 意義: 保護者の安心感醸成だけでなく、職員を不当な疑いから守るためにも、カメラ等の設置は有効な手段となります。

防災・減災対策

能登半島地震などの災害を教訓に、施設の強靭化が進められます。

  • 対象工事: 建物の耐震化、ブロック塀の撤去・改修、水害対策(止水板設置など)、非常用自家発電設備の整備。
  • 補助率: 原則国1/2ですが、公立園や特定の条件では嵩上げ措置があります。

賃貸物件・老朽化改修支援

賃貸物件を活用して保育所を運営している場合や、認可外から認可へ移行する場合の改修費、老朽化した施設の修繕費に対する補助もあります。特に「こども誰でも通園制度」を実施するために必要な改修も対象となります。

6. 新たな事業モデルへの挑戦

保育士と児童

既存の保育所の枠を超えた、地域貢献や多機能化への支援も予算化されています。

こども誰でも通園制度(乳児等通園支援事業)

就労要件を問わず、時間単位でこどもを預かる新制度です。令和7年度からの本格実施に向け、システム改修や設備整備の補助が重点的に行われています。地域の子育て家庭との接点を増やし、園児獲得(リピーター確保)につなげる施策として注目されています。

病児保育・多機能化の推進

人口減少地域においては、保育所が「地域の多機能拠点」となることが求められています。障害児や病児への対応、高齢者との交流、地域食堂の実施など、地域のインフラとしての機能を強化する取り組みに対し、モデル事業として補助が出ます(1自治体あたり1,000万円など)。

まとめ:制度を賢く活用し、持続可能な園運営を

今回の補正予算案は、4月遡及での処遇改善や臨時加算といった「緊急支援」と、ICT化や安全対策といった「未来への投資」の2本柱で構成されています。

特に処遇改善の遡及対応は、計算事務が煩雑になる可能性がありますが、職員の信頼関係構築のためには迅速な対応が不可欠です。また、ICTや設備改修の補助金は、申請期限が短いケースも多いため、自治体からの通知を見逃さず、早めに業者選定や見積もり取得の準備を進めることを強くお勧めします。

これらの支援策を最大限に活用し、選ばれる園、働き続けられる職場づくりにお役立てください。

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