【幼保施設の経営者必見!】保育の2025年問題と、「選ばれる園づくり」

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目次

はじめに

SNSで「保育園落ちた!〜」などの言葉が話題になり、待機児童や保育士不足が近年までの幼保業界での注目を集めていましたが、一方でコロナ禍における新しいライフスタイルや少子化の加速によって、保護者や保育者から選ばれる園づくりが重要なテーマになりつつあります。

選ばれる園づくり、という言葉を聞くと、危機感を煽るように聞こえる方もいらっしゃるかと思いますが、本来幼保施設に求められている、子どもたち、保育者、保護者の幸せを実現する、ということを愚直に実行することに他なりません。

また、保育の2025年問題、という問題があります。厚生労働省が発表した、2025年をピークに、保育園の利用者数が減少に転じる、という試算データです。

この問題に直面している今、幼保施設の経営者はどのような園づくりをしていく必要があるのか、この記事では、保育の2025年問題から、「選ばれる園づくり」についてご紹介していきます。

保育の2025年問題とは

「保育の2025年問題」経営者なら聞いたことのある方もいらっしゃると思います。

厚生労働省の試算データでは、2025年の保育施設の利用者数が300万人でピークを迎え、そこから緩やかに減少に転じる、というものです。

保育所の利用児童数の今後の見込み

厚生労働省作成「保育を取り巻く環境について」2021年度21ページより引用

これは全国的なデータですので、例えば少子化が進むのが早い地域などでは、すでに0歳児の定員割れなどが顕在化してきており、2025年から問題が深刻化する、という訳ではなく、今そこにある課題ともいえます。

保護者が保育園を選べる、という状況において、「子どもにあった、園の理念や保育方針に共感できる施設」を選ぶようになり、少し園から遠かったとしても、教育理念を信じられる園、自身の子どもを預けたいと思える特色のある園、などに入園希望者が集まるという時代がやってくるのではないでしょうか。

「保育」「保育施設」の現状とあるべき理想の姿とは

幼保施設の経営者も、そこで働く保育者も、より良い保育施設にしたい、という強い思いはあるものの、全ての人に共通するはっきりとした姿があるわけではありません。

理想の姿に唯一の正解があるわけではなく、保育の理想像も多様であり、多様であるべきですが、保育に関わるすべての人たちが、「よりよい保育とは」「保育施設の理想像とは」という点について考えていく必要があります。

一方、幼保施設の現場は非常に忙しく、日々の業務、目の前の子どもたちに追われ、考える時間的・精神的な余裕もないのが現状です。

しかしながら、この理想像、「理念」が先にあってこそ、具体化のための「打ち手」を考えることができます。
理念を実現するためのカリキュラムや人材は、行き当たりばったりでは決めることができません。

より良い保育を考え、理念に落とし込み、理念を目指して保育を形作ることが、保育の質の向上につながっていきます。

では、問われていく「保育の質」とはどのようなものでしょうか。

「保育の質」とは

2020年の厚労省の検討会では、「保育の質」について、「子どもが得られる経験の豊かさと、それを支える保育の実践や人的・物的な環境など、多層的で多彩な要素により成り立つ」と位置付けました。

改めて、人的・物的な環境が重要だということが示され、保育の質を捉える視点として、「子どもにとってどうか、という視点」を基本としました。

つまり、子どもの主体性を尊重することや環境による保育が重要であることが強調されたということです。

この視点を元に、選ばれる園になるためにはどのような要素に目を向けたら良いのでしょうか。以下にご紹介していきます。

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選ばれる園になるには

選ばれる園になるためには「保育の質」が重要だということを上で述べましたが、保育の質を高めるために必要なポイントが大雑把にいうと2つあります。

・構造の質
・プロセスの質、実施運営の質

という2点です。

構造の質は、組織の体制(保育者の配置基準やクラスのサイズ、園庭や保育室の面積基準)など制度的に定められた環境の基準のことです。単純に、保育士1人あたりがみる子どもの数が減ったら、保育の質は向上するよね、ということです。

プロセスの質、実施運営の質は、保育者と子どもとのかかわりや子ども同士の関係性など、日常の保育実践そのものの質や、日常的にどのように記録、評価、計画、研修、マネジメントを行っているかなど、現場の行動の質を高めるための視点です。

このような視点を踏まえて、選ばれる保育園になるためには、

・園の全体のレベルアップ、やり方の見直しから、保育の質を高める方法と
・園の人員に余裕を持たせる、構造的な部分でのゆとりを持たせて保育の質につなげる
・特徴的な保育のやり方を取り入れることで、他園との差別化をはかる

というような方向性が考えられます。

園のコンセプトを大きく変えることなく、「保育の質」を高める

この方法は、今までの理念や園の方針を大きく変えることなく、日々の保育者の実践の質を高めることで、保育の質を向上する、という方法です。
上述の視点で言えば、「プロセスの質、実施運営の質」を高めることで選ばれる園を目指そうという視点です。

園に様々な新しいもの(特徴のある保育など)を取り入れる

上述の視点で言えば、「構造の質」に近い視点です。園の打ち出す特色として、例えば英語教育を取り入れてみる、プログラミング教育に触れてみる、など、保護者に対して選びやすい特色を示す、というのも、選ばれる園になるための方法の一つです。

ただし、このような変更も、理念に沿ったものでなければ、付け焼き刃的な対策で終わってしまいます。いくら目新しいカリキュラムを入れたとしても、子どもたちの主体性を損わせてしまうような保育をしていたら、保護者が選ぶ園にはなり得ません。

どちらか一方ではなく、中長期的な計画が重要

このような方法を考えていく上では、まずは理念、理想の幼保施設像を明確に定義すること、そして、その理念を実現するための中長期的な計画を作成すること、その計画に沿って、どのようなタイミングで実践していくのか、をしっかりと認識しながら進めていく必要があります。

保育者の育成も重要な視点

保育の質を考える上で、保育者の育成という視点も改めて重要なポイントです。
日々の業務に忙殺されて育成や研修の時間が取れない、というお話は、幼保施設の経営者から非常によく聞く話です。

また、保育者自身も、園への要望として研修やスキルアップの充実などを上げている人は非常に少ないというところもポイントです。

参考:三重県実施の、保育園保育士に対して実施したアンケート

代わりに上位に来ているものは、働き方の改善や給与への改善です
まずは自分たちの生存が脅かされる状態をなんとかしなければ、保育の質に時間を費やすことが難しい状況です。

このような状況で、保育の質を高めるために経営者が考える必要があるのはどのようなことでしょうか。

保育者にまず必要なのは「時間と心のゆとり」

幼保業界の長年の課題として、「人・組織」に関する課題が挙げられます。

園と職員の間の保育方針のズレ、子どもたちの生命、身体に対する安全と、育ちを預かる重い責任、残業や持ち帰り仕事などの労働環境、給与や福利厚生などの待遇に関する不満などが、離職率の高さとなって表れています。

経営者も園長も、ベテランも若手も、保護者も、保育に対して熱い思いを持ち、子どもを見守る気持ちは同じなのに、ほんの些細なボタンの掛け違いから、大きな不満へとつながってしまいます。

まずは前提として子どもを起点にした対話をする、ということが重要です。

ただ、実際は業務の時間が多すぎて子どもについて対話する時間が取れない、具体的にどうしたら良いのかわからない、というのが現状だと思います。

この問題に対しての対策としては、

・業務負荷を減らして時間のゆとりをつくること
・園の方向性を明確にして共有し、現状を可視化することで心のゆとりをつくること

この2点がポイントです。

時間と心のゆとりができてはじめて、子どもたちの成長に対して対話をする、という保育の質につながる話ができるようになります。

時間のゆとりを作る方法は?

時間のゆとりを作るには業務の効率化が重要です。

・ICTの導入
・業務の見直し
・行事の見直し
・職員の人数の見直し

など、ひとつずつ洗い出してみることで、
園全体で取り組むべき課題が出てくるのではないでしょうか。

この見直しも、園の理念が明確であるからこそ、取捨選択の判断ができるようになります。
保護者のニーズに応えて、あれもこれもと導入した結果、リソースが足りなくなってしまう、ということは往々にして起こりがちです。

例えば行事についても、伝統だから、と続けたり、保護者からの要望があったから導入するのではなく、園の理念や子どもたちを起点に、減らす、ということも選択肢として考えることが重要です。

従来、そしてこれからの保育者の育成

例えば、従来の職員の育成方法の一つとして、誰もが全てのことをある一定のレベルまでできるようになる、という画一的な育成方法があります。

この育成方法についての是非については、メリットデメリットの両面が存在しますので言及は避けますが、今後の保育の方針を考えるうえでは、保育者の育成についても、保育と同様に、職員の個性をどう活かすかという時代になりつつあります。

保育者の育成も、基本的には子どもたちと同じで、主体性をどう活かすかを重視し、指示をするよりも見守る。得意なところを見つけて活かす、ということを大切にしていくことで、

お互いの存在を気に留め、組織の中に自分の居場所があっていいのだ、という心理的安全性が高まります。保育者が様々なことに挑戦できる環境となることで、組織としての成長につながります。

理念を軸にした園運営:選ばれる園づくりを実現できるメンバーの採用

どのような取り組みにも、園としての理念がセンターピンに置かれていることが重要です。
それは採用においても同じで、理念に共感してくれる人を採用する、という軸がブレると、能力がある人だったとしても、早期離職につながってしまいます。

理念を軸にした採用のポイントは、

・まず前提として理念をしっかりと作ること
・理念を実現するために必要な人物像を洗い出すこと
・自園の特徴や魅力をしっかりと理解すること
・必要な人物像が魅力的だと感じるポイントをしっかりと伝えること

このポイントにしたがって、一度採用の基準や求人の内容を見直してみることをおすすめします。

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まとめ:実際に定員割れが起きてからでは遅い

「選ばれる園づくり」を実現するためには、総合的な視点から園を見直したり、つくり変えていくことも必要になると述べてきましたが、この施策を実現するのに最低でも1〜2年はかかるのではないでしょうか。

経営者のみなさんが作成する経営計画書のうち、今回の記事の内容は、短期、中期、長期というスパンで作成するものでいうと、中期経営計画書にあたるような内容のものだと考えられます。

そうだとすれば、実際に入園希望者が減ってきたり、定員割れが起きてしまってから施策に取り組むのでは手遅れになってしまう可能性もあります。

2025年問題をきっかけに、さらに大きくなると予想される幼保業界の動きに対して、今のうちから取り組むことが重要です。

今後ニーズの高まる優秀な人材を今のうちから採用しておく

保育の質を高めるためにも、理念を実現できる優秀な人材の採用が重要です。
選ばれる園をつくるために、各幼保施設が採用に本腰を入れると、採用コストが上がり、より優秀な人材が採用しづらくなります。

保育のカタチは、幼保施設に特化した採用の支援を行うサービスです。
実際に保育園を運営しているので、保育園の現場の状況も理解した上で、最適なご提案をさせていただくことが可能です。

以下のリンクより、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

株式会社シェンゲン執行役員、人事責任者
「保育のカタチ」事業責任者、採用支援コンサルタント

前職ではリクルートの代理店にて、7年間1,000社以上の採用支援を担当。シェンゲン入社後は、幼保業界の「人」に関する問題解決に特化した専門家集団「保育のカタチ」を立ち上げ、事業責任者として従事。

保育園の統括マネージャーとして運営にかかわりつつ、保育士転職サービスでのキャリアサポートや、保育園への採用コンサルタントも行う。

採用活動を内製化する伴走型の採用支援や保育士向けの研修、紹介予定派遣などのサービスを公共機関や幼保施設の運営法人に向けて提供中。祖母、母、妹が保育士という保育士一家で育った。

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