景気の停滞等により共働き家庭が増加して、保育園のニーズは高まっており、加えて、少子化や昨今の世論によって、さらに質の高い保育も求められています。
質の高い保育を実現するには、保育園の運営団体、さらには保育士自身にもスキルアップや研修への意欲が求められています。
今後、少子化が加速する中で選ばれる園になるために、また、子どもたちに質の良い保育を実践していくために保育士さんが受けておきたい研修をご紹介します。
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保育士の研修は大きく分けると目的に応じて2つ
スキルアップ(質の良い保育の実現)のため
保育士の研修は、目的に応じて大きく2つに分けられます。
1つはスキルアップ(良い保育の実現)のため。
研修を受けることで、保育に使える専門知識を身につけられたり、モチベーションアップ、持ち帰った知識を園に反映することで、職場環境の改善にもつながります。
処遇改善のため
保育士の研修には、各都道府県が実施主体の、キャリアアップ研修制度があります。
キャリアアップ研修は、受講することで、園に処遇改善の手当が交付されることになります。園は、その手当を元に、保育士の給与をアップすることにつなげていくわけです。
スキルアップのための研修にはどのようなものがある?
製作・描画の研修
保育園での製作活動や描画活動の研修です。
研修の多くは、実際に製作や描画をやりながらのワークショップ形式の研修が多いため、参加する保育士さんも楽しく研修を受けることができて人気があります。
保育士が製作のアイデアを探す場合は、Web、インスタグラム、Twitter、Youtube、Tiktok、書籍などがあります。
書籍やWebでの製作アイデアは、写真を元に解説されていることが多いので、一つひとつ確認しながら進めていくことになります。
中々ご自身で製作しているものとの違いが分かりづらいこともあり、分かりやすさの点では動画に優位性があります。
動画で製作アイデアを探す場合は、実際にどのように作っていくのかを解説しているので分かりやすいですが、実際に自身の手元と動画内で製作されているものが合っているのかという点では、実際に講師から指導を体験できる研修を受けてみるのが良いでしょう。
保育園では年齢ごとに、発達の差が大きいので、安全面の配慮への仕方や、簡素化、複雑化などの方法が分かれば、保育園に戻った時に、すぐに実践できるという点もメリットです。
私が先日、自社の保育士さんにインタビューをしてみたところ、保育士さんはみんな製作が器用にできて、絵が上手、という訳ではなく、製作、描画それぞれに苦手にしているという保育士さんもいらっしゃいました。
ですので、このような研修がおすすめの方としては、
・園での製作のアイデア、レパートリーが少ない方
・製作のアイデアは浮かぶが、製作すること自体が苦手な方
・お絵描きが苦手な方
・少しの時間を効率的に製作に回してみたい方
です。
ダンス、音楽、リトミック研修
保育の現場では運動遊びや音楽遊び、リトミックなども日々の活動として実施されます。
子どもが感性や表現力、リズム感を培うことができるので、こちらも人気のある研修です。
運動の発表や、音楽の発表におすすめの楽曲や、子どもたちの発達度合い、年齢に合わせた振り付け・リズム・音程など、実践的かつ専門的な学びができる研修もあり、種類は豊富です。
特に、音楽の指導にはある程度の専門知識が必要になるため、子どもに適切な指導を行うためにもスキルアップには是非参加しておきたい研修です。
もちろん主催する団体によって違いがありますが、座学と実技を分けて行っていることが多いようです。
弊社の社内インタビューでは、音楽分野も苦手と感じている保育士さんがいらっしゃいました。
そもそも一般的な感覚としては、保育士さんは全員ピアノが弾けて、音楽も得意と感じる方が多いのではないかと思います。
しかし実際は、発表会などの際に保護者さんなどの前で伴奏するのが緊張する、ピアノが上手な先生の前での演奏も緊張する、新しい楽曲の習得に時間がかかる、など、保育士さんも音楽での悩みを抱えている方もいらっしゃるということが分かりました。
こちらの研修がおすすめの方は以下のような方です。
・リトミックやリズム運動を保育で実践したい。
・ダンスや体操のレパートリーを知りたい、または増やしたい
・ピアノや演奏が苦手
この記事をきっかけに、研修を受けてみるというのもおすすめです。
遊び、シアター研修
保育の現場では、さまざまな遊び(手遊びや歌遊びなど)が日々行われています。
また、シアターといって、エプロン上やパネル上で、キャラクターを実際に動かして物語を表現するエプロンシアターやパネルシアターといった表現方法も人気です。
このような、遊びやシアターを保育界の著名人が実演したり、または、遊びやシアターの制作者が講演するスタイルの研修が多く、遊びを体感したり、シアターを演じてもらえるため保育士さんに人気の高い研修です。
物語を用意したり、物語の登場人物をパネル上に登場させるために製作が必要だったり、アイデア、構想段階から準備に手間と時間がかかる分、保育士さんも取り組むのが難しいため、研修を受けることによって、アイデアを仕入れることができれば、子どもたちの保育にも良い影響を与えることができるでしょう。
弊社内のインタビューでは、今後挑戦したいこととして、エプロンシアターを挙げてくださった保育士さんがいらっしゃいました。
このような保育士さんの挑戦の意欲を形にするために、是非研修を受けてみてはいかがでしょうか?
この研修がおすすめの方
・子どもに人気の新しいシアターのアイデアを知りたい方
・シアターは作ってみたものの、どう演じたら良いか悩んでいる方
・手遊び、歌遊びなどの遊びのレパートリーを知りたい方
絵本研修
保育の現場では、絵本の読み聞かせも日々行われています。
絵本は読み聞かせる、という以前に、どのような絵本を選ぶか、というところから悩みが始まることも多く、子どもたちの発達に合わせた読み聞かせのコツや絵本の選び方を教えている研修が多いです。
研修では、講師が実際に実演しながら、絵本の持ち方から読み方までコツを教えるという内容から、書店などや出版社が主催で行われるものは、作者が直接絵本についての講演をするというものまでさまざまです。
中には、絵本の読み聞かせは極力感情を入れない、セリフごとに声色を変えたりしないというような内容のものもあり、ご自身や園の保育理念とも照らし合わせながら参加する研修を選んでみるのもよいでしょう。
この研修がおすすめの方
・子どもの発達段階に合わせた絵本を知りたい
・絵本の読み聞かせ時に、子どもの反応がよくない
・ご自身で、絵本の読み聞かせに苦手意識がある
・食育研修
保育園では、食育への取り組みも近年加速度的に重要度が増しています。
「乳幼児期から、発達段階に応じて豊かな食の体験を積み重ねていくことにより、生涯にわたって健康でいきいきとした生活を送る基礎となる「食を営む力」を培うことが重要である」、というように、厚生労働省も食育の指針を示しています。
(引用:『楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針~』(概要) )
また、子どもたちの中にはアレルギーがあったり、偏食があったりと、個々の子どもに対してきめ細やかな対応が必要なため、食に関する研修も人気の研修です。
研修の内容としては、
保育園での食育についての基礎的な知識から、アレルギー対応や乳児の離乳食、偏食への対応、肥満や食生活の予防などさまざまな種類の研修が実施されています。
食育の研修には、民間実施の研修から、都道府県実施のキャリアアップ研修、食育アドバイザーなどの資格講座までさまざまなものが実施されています。
自園の状況などに応じて、受ける研修を選んでみるのもよいでしょう。
この研修がおすすめの方
・保育園でのアレルギー、偏食の子どもに対応する方法が知りたい
・食育の知識を深め、保育園で保護者さんや子どもたちに実施したい
手品、マジック研修
保育園での子どもたちの遊びのバリエーションとして、手品、マジックを教える、という研修もあります。
特に手品・マジックは、子どもたちの興味を引くのにぴったりで、保育士が子どもたちに手品を見せて考える力を養ったり、逆に子どもたちにマジックの作り方や実践方法を教えることで、子どもたちの表現力を培うことが可能です。
この研修がおすすめの方
・遊びのレパートリーとして、マジックを覚えたい方
・子どもたちにマジックを通じて考える力や表現力を培いたい方
障がい児研修
保育園では、様々な状況の子どもたちが通園しています。
中には発達障がいなど、近年の医療の進歩によって、発達が気になる子どもの割合は増加傾向にあり、保育園では障がい児の支援の必要性が高まっています。
そこで、保育園で障がいをもつ子どもたちをどのように支援していくか、という方法を学べる研修も保育士さんのニーズが高い分野です。
保育士が保育を通じて感じたことを保護者さんへどう伝えるか、という方法や、医療などの関係機関へどうつなげるか、といった、障がいの診断を受けるまでの道筋を学ぶ研修もあります。
しっかりと保護者との対話や連携を通じて、相互に理解を深めることで、より子どもの特性に応じた丁寧な支援を実施することが可能です。
各都道府県で実施されているキャリアアップ研修にも、障がい児保育の研修があるほか、民間が実施している各種セミナーなどもあり、目的に応じて使い分けることが重要です。
障がい児研修では、障がいのある子どもの理解や、障がい児の発達の援助、障がい児保育の環境などの基礎知識や、実際の障がい児保育の指導計画、記録および評価、家庭および関係機関との連携などを学びます。
今は園内に障がいのある子どもがいなかったとしても、今後の子どもたちへのきめ細やかな保育の実施のために、障がい児保育について研修でしっかりと準備しておくことも重要でしょう。
この研修がおすすめの方
・障がいのある子どもをもつ保護者さんとの関係構築が知りたい
・障がいのある子どもに対しての適切な環境整備や支援方法について知りたい
アンガーマネジメント研修
保育園で働くにあたって、子どもや同僚、あるいは保護者さんに対して、様々な感情が沸き起こるのは、保育士さんも人間であるため自然なことです。
感情をいかにコントロールし、適切な人間関係を作っていくか、いわゆるアンガーマネジメントの研修も保育士さんには人気の研修です。
保育士さんのみならず、怒りに身を任せてしまった結果、後悔する、ということは人間社会に生きるわたしたち一人ひとりに起きうることとして、怒りとの上手な付き合い方を学び、感情のコントロール方法を覚えることで、職場での円滑なコミュニケーションやストレスの軽減、生産性のアップにつながるでしょう。
この研修がおすすめの方
・自身の怒りからくる行動によって、後悔した経験のある方
・怒りの感情のコントロールの仕方を学びたい方
・子どもの怒りの感情と上手に付き合いたい方
こちらの記事では保育士さんのアンガーマネジメントのコツについて解説しています。
保育士のアンガーマネジメント
是非参考にしてみてください。
保護者対応研修
保育の現場では、毎日保護者さんとの対応があります。
送り迎えの際や、連絡帳でのやりとりなど、日々の子どもたちの様子を共有する重要な業務です。
時には保護者さんからのご要望があったり、ご指摘があったり、保護者さんとの連携がうまくいかない、保育士の対応ひとつでその後の子どもへの保育にも影響が出てしまいかねないことから、保育士さんの中でも保護者対応のスキルアップをしたいと考えている方は多いです。
保護者対応を学ぶ研修は、各都道府県実施のキャリアアップ研修や民間の研修などがあり、キャリアアップ研修では、保護者支援・子育て支援という研修の中に、保護者対応の方法を学ぶ箇所があります。
保護者支援・子育て支援に関する理解を深め、適切な支援を行うことができる力を養い、他の保育士等に保護者支援・子育て支援に関する適切な助言及び指導ができるよう、実践的な能力を身に付けるための研修です。
研修の概要は下記の通りです。
この研修がおすすめの方
保育士等キャリアアップ研修とは、保育士の待遇向上と専門性強化を目的として、平成29年4月にガイドラインが制定された制度です。
この制度は政府による保育業界の処遇改善制度の取り組みのひとつで、処遇改善等加算によって作られた制度です。
保育士としての経験年数や役職などの要件を満たしたうえで、所定の研修を受講し、技能を習得することで補助金(処遇改善)が受けられる仕組みとなっています。
処遇改善等加算には、処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ、と、2022年から始まったⅢの3種があり、各都道府県で実施されるキャリアアップ研修は処遇改善等加算Ⅱによって策定されたものとなります。
まとめ:研修を受けたからすぐにスキルアップするわけはなく、実践が重要
いかがでしたでしょうか。
今回は保育士さんが受けたい研修やニーズを実際のインタビューなどの事例を入れつつ解説しました。
研修を受けた日からすぐに実践できる内容もあれば、持ち帰ったものを実践していくことで、園全体の意識の向上につながるものなど様々です。
ただ研修を受けて終わり、ということではなく、学んだことを日々実践していくことで保育の質を高めていく、という意識が大切です。
是非こちらの記事をきっかけに、保育環境やご自身の働き方について考えてみる機会にしていただければ幸いです。
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