保育園では、子どもたちの健康と安全が何よりも大切です。特にアレルギーを持つ子どもたちへの対応は、とてもデリケートで重要な課題です。
この記事では、保育園におけるアレルギー対応について徹底解説します。アレルギー予防の基本的な知識から、緊急時の対処法、現場での取り組み方など、幅広く紹介するので、幼保施設で働く方はぜひ参考にしてみてください。
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引用元:保育のカタチ
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保育園でのアレルギー対応は国のガイドラインに従う
保育園では子どもの健やかな生活の基盤として「食を営む力」を育てるための食育を重視しており、全ての子どもに給食を提供することを原則としています。これは、食物アレルギーを持つ子どもにも同様に適用されるため、園ではアレルギーのある子どもに対しても、給食の提供を行う必要があります。
国のガイドラインである「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」という書類に基づき、アレルギーの症状を防ぐための取り組みに適切に対応することが重要です。
子どもの食物アレルギーの種類とその特徴
ここからは、子どもの食物アレルギーの種類とその特徴について解説します。子どもの食物アレルギーとして挙げられるものは以下のとおりです。
- 即時型食物アレルギー
- 新生児・乳児消化管アレルギー
- 食物アレルギーに関与したアトピー性皮膚炎
それぞれ詳しく見ていきましょう。
即時型食物アレルギー
食物アレルギーの最もよく知られる形態が「即時型」です。アレルギーを引き起こす食物を摂取すると、数分から30分の間に皮膚や粘膜にかゆみ・赤み・腫れが生じるだけでなく、咳やゼイゼイ・ヒューヒューという喘鳴・嘔吐・下痢・腹痛など、多くの症状が出ます。
アレルギー反応は年齢に関係なく発生しますが、特に0〜1歳の乳幼児に多くみられ、全体の約80%は5歳以下の子どもであるとされています。
年齢に応じてアレルギーを引き起こしやすい食物が異なるため、前もって把握しておくと良いでしょう。0歳児は、鶏卵・牛乳・小麦が主なアレルゲンであり、1歳児では鶏卵や牛乳以外にも、いくらなどの魚卵やナッツ類・果物がアレルゲンとなり得ます。
2〜3歳を過ぎると、ナッツ類に対するアレルギーが急増し、学童期に入ると、甲殻類や果物に対するアレルギーの頻度が高まります。
新生児・乳児消化管アレルギー
新生児・乳児消化管アレルギーは、粉ミルクに含まれる牛乳タンパク質が原因で起こります。
摂取後2時間以上経ってから嘔吐・下痢・血便などの症状がみられるのが特徴です。1歳の時点で約半数の子どもが改善し、2歳になるとおよそ90%がこの反応から解放されるとされています。
食物アレルギーに関与したアトピー性皮膚炎
食物アレルギーは特定の食品を摂取するだけでなく、皮膚に触れたり吸い込んだりすることでアレルゲンが体内に侵入し、アレルギー反応を引き起こすこともあります。
生後約3ヶ月頃までにみられる湿疹や赤みは、かゆみを伴いながら頭や顔から体全体へと広がることがあります。アトピー性皮膚炎と診断され、治療やケアを続けても改善しない園児は、食物アレルギーが原因である可能性も考えられるでしょう。
食物アレルギーの主な症状一覧
食物アレルギーの主な症状は、以下のとおりです。
アレルギー名 | 発現場所 | 主な症状 |
即時型アレルギー | 皮膚症状 | ・発疹が皮膚に出る ・赤く腫れる ・じんましんが出る ・湿疹が持続的におこり悪化する ・皮膚がかゆくなりかきむしる ・体がむくむ |
粘膜(鼻) | ・くしゃみや鼻水がが止まらない ・鼻がつまって息苦しい | |
粘膜(目) | ・目が充血して赤くなる ・まぶたが腫れむくんだようになる ・目の周りにかゆみが現れが赤くなる ・涙が止まらない | |
粘膜(口の中) | ・唇が腫れ、喉の奥がかゆい ・口の中に違和感がある | |
粘膜(喉) | ・ヒューヒューとした喘鳴を起こす ・閉塞感があり呼吸がしづらくなる ・咳が止まらず苦しい | |
消化器 | ・嘔吐や吐き気がある ・腹痛がおこり、下痢や水便が出る | |
植物依存性運動誘発アナフィラキシー | 全身 | ・じんましんや体や顔のむくみが出る ・アナフィラキシーショックがおきる |
口腔アレルギー症候群 | 粘膜(口の中) | ・口の中に違和感があり、かゆみや痛みを感じる |
アレルギー症状はかゆみだけが現れる場合もあれば、呼吸困難や激しい咳・顔の腫れなどがみられることもあります。食物アレルギーの症状は多岐にわたり、アレルギー反応の発現する場所や症状の表れ方は子どもごとに異なります。
そのため、保育園では入園や進級の際に毎年必ず食物アレルギーの除去希望届を提出してもらいましょう。同時に、どのような症状がどの部分に出やすいのかを保護者に詳しく聞いておくことが大切です。
保護者・保育士・医師が連携をしっかり図ることで、保育園内でのアレルギー事故を防げるでしょう。
園児がアレルギー食品を食べてしまったときの対処法
次に、園児がアレルギー食品を食べてしまったときの対処法について解説していきます。主に挙げられる対処方法は以下のとおりです。
- どの程度の症状か確認する
- 症状に沿った適切な対応をする
- 保護者と連絡をとり改善策を出す
それぞれ詳しく見ていきましょう。
どの程度の症状か確認する
食物アレルギーを持つ子どもが誤ってアレルギー物質を摂取してしまった場合、まずはどのような症状が現れているかを確認します。
保護者から事前に聞き取った症状と一致しているかどうかを確かめつつ、口に入れたアレルギー物質を取り除きます。また、肌に付着したアレルギー物質をしっかりと拭き取りましょう。
その後、症状の詳細を確認し、アナフィラキシーショックの兆候がないか注意深く観察し、園長や主任保育士にアレルギーの状況を報告します。
症状に沿った適切な対応をする
アレルギー症状は多様であり、その重症度に応じて対応方法が異なるため、必ず症状のグレードを確認してから適切な対処を行わなけれななりません。
基本的には、アナフィラキシーの症状がみられる場合はエピペンを使用したり、救急車を要請することになります。それ以外の軽症の症状であれば、保育園内で対応することが可能です。
しかし、保護者に連絡をして、医療機関での診察を希望された場合は、症状の程度に関わらず、保険証などを持参して受診することが重要です。また、園内対処中に子どもの体調に変化があった場合は、保護者に再度連絡を行うとともに、速やかに医療機関を受診しましょう。
保護者と連絡をとり改善策を出す
誤飲や誤食が発生した際は、まず経過観察を丁寧に行い、その後保護者に対応内容や対処後の様子・どのようにして誤食が起こったのかを詳細に伝え、謝罪します。電話での謝罪に加えて、保護者がお迎えに来た際にも必ず状況の説明と謝罪を忘れずに行うことが重要です。
アレルギー症状を示した園児が帰宅した後も、担任保育士は家庭に連絡を取り、帰宅後の様子を確認しましょう。体調に変化がないか、不安に思う点などがないかを尋ね、再度謝罪します。
その後、園で誤飲や誤食が発生した理由や改善すべき点を検討し、保育士全員で再発防止策を徹底しましょう。
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【最も危険】アナフィラキシーショックを起こしたときの対処法
アナフィラキシーショックは、迅速に対応しないと命にかかわります。できる限り速やかに処置を行い、救急車での搬送を依頼することが命を守るために重要です。
アナフィラキシーショックを起こしたときは、以下の流れで対処しましょう。
【アナフィラキシーショックが起きた時の対処法】
①他の保育士に援助を頼むために大声で声をかけ、アナフィラキシーショックが起きたために救急車を要請したいこと、援助が必要なことを伝える
②エピペンを園児が所持しているのであれば、すぐに使用する
③体をゆすったり動かしたりしないように仰向けに寝かせ、足を30cm高くする
④保育士は体調に変化がないか声を掛けつづける
⑤心音が聞こえない場合や、脈が触れない場合にはすぐに心肺蘇生法を行う
⑥救急車が到着したら、『何のアレルギーがあるか』『いつ何を食べたか』『食べた量』『到着までにしたこと』を救急隊員に伝える
エピペン(アドレナリン自己注射器)は、アナフィラキシーショックが発生してすぐに使用することで症状を和らげる効果があり、アナフィラキシーショックの危険がある人に処方される薬です。自己注射を行うことでアナフィラキシーの症状を軽減できます。
しかし、誤った使い方や症状が悪化してからの使用では効果が薄くなり、命の危険が伴うこともあります。そのため、保育士全員がエピペンの正確な使用方法と、適切な使用タイミングを理解していることが重要です。
保育園で誤飲誤食をなくす予防策
ここでは、誤飲誤食のリスクを最小限に抑えるための具体的な予防策を紹介します。
アレルギーのある子どもの席を固定する
アレルギーを持つ子どもが同じ席に座るように席を固定することで、誤飲誤食のリスクを減らせます。他の子どもの食材が混入する可能性を防ぎ、常に安全な環境で食事を楽しむことができます。
担任保育士1人に任せない
誤飲誤食のリスクを減らすために、担当の保育士1人に全ての責任を負わせることは避けましょう。複数の保育士が協力し合い、お互いをフォローする体制を整えることで、見落としやミスを防ぎます。
全員でアレルギー対応についての知識を共有し、子どもたちの安全を守ることが重要です。
除去食の皿を他の皿と変える
アレルギーに対応した除去食は、他の食事と区別しやすいように専用の皿を使用しましょう。
色やデザインの異なる皿を使うことで、間違って他の子どもが誤食するリスクを低減します。また、除去食の皿に名前を明記しておくことも効果的です。
アレルギー対策では部分除去ではなく完全除去が基本
本来、食物アレルギーの管理では「必要最低限の除去」が家庭では推奨されますが、保育園では異なります。食物アレルギーを持つ子どもには、保育園では給食の安全性を優先して「完全除去食」を与えるのが基本です。
特定の食べものを取り除く「除去食」や、取り除いた食材の代わりに別の食材を使って栄養バランスを整える「代替食」などが、完全除去の方法として挙げられます。
食物アレルギー対応の全員給食を実現した実例
市川保育園では安全な給食提供を目指し、給食の完全除去対応に取り組みました。この園では、すべての子どもたちがおやつを含めて同じメニューを楽しめるよう、アレルゲンを含む食材を使わないレシピを開発したのです。
調理スタッフは厳格な衛生管理を徹底し、アレルギー反応を防ぐために工夫しています。この取り組みにより、すべての子どもが安心して食事を楽しむことができる環境が整えられました。
食物アレルギーや完全除去食について悩んでいる園関係者の方は、市川保育園の例を参考にしてみてください。
まとめ
誤飲や誤食は、アレルギーを持つ子どもたちにとって深刻な問題となり得ます。この記事で紹介したような対策を講じることで、保育園における誤飲誤食のリスクを大幅に減らすことができます。
子どもたちが安心して食事を楽しむことができる環境づくりに努めましょう。
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