保育園・幼稚園の新人職員が主体的に仕事に取り組めるように働きかける面談の5つのポイント

目次

はじめに

幼保施設では4月〜5月は新年度も始まり、年間で最も忙しい時期です。

この時期には新入職員も入社し、慣れない環境と繁忙期の双方から疲弊してしまいます。

そのような状況で、マネージャーが適切に新入社員を導くことができなければ、5月末から6月には、新入職員が退職してしまう、という可能性も考えられます。

そこで、以前の記事では、適切な新入スタッフ管理のために、5月末までに全てのスタッフと面談を行う必要性と、そのポイントについて解説しました。

まずは、スタッフの話を聞くことに徹すること。

今の状況を含め、しっかりと話を聞くことで、スタッフの心理的安全性が高まり、信頼をされることが大切です。

その後で、マネージャーからスタッフヘの働きかけを行う、という流れを紹介しました。

この記事では、難易度の高い、マネージャーからスタッフへの働きかけを行う際のポイントを、もう少し深掘りして、詳しくご紹介していきます。

この記事を読むことで、

・スタッフの主体性を高めることができる
・スタッフ自身の目指す方向が明確になる
・意欲的に仕事に取り組めるようになる

面談のポイントを理解することができます。

前提となる2つのポイント

マネージャーからスタッフに面談の中で働きかけを行う際には、必ず守らなくてはならないポイントが2つあります。

以下のポイント2つを守らずに、先にマネージャーが話を始めることは避けましょう。

・スタッフが自分の話を終えている
・働きかけをする際には、必ず相手の許可を取る

もしこのポイントを守れなければ、

面談の成果は格段に薄くなってしまいます。

スタッフが自分の話を終えている

まず、マネージャーは必ずスタッフの話を聞くことに徹する、「傾聴する」ことがポイントです。

必ず先に聞く姿勢を示し、スタッフの話を徹底的に聞くことで、

・スタッフの心理的安全性が高まる
・話をしてくれる回数が増え、情報量が増える
・マネージャーの面談スキルが上がる
・面談時間を有意義なものにできる
・面談での話の精度が上がる

というメリットが得られます。

傾聴の姿勢を崩さず、話をしっかりと最後まで聴き終えることで、スタッフから「自分ばかり話してしまって」というような話題が出てくることがあります。

そこから、ようやくマネージャーの話す順番が回ってきます。

働きかけをする際には、必ず相手の許可を取る

スタッフの話を集中して聞くことで、マネージャーの頭の中には、さまざまなことが浮かんでいるはずです。

・追加の質問
・提案
・フィードバック
・アドバイス

など、経験や知識の中から、話したいことが沢山あるはずです。

ここでもし、マネージャーが堰を切ったように上記を話し始めたら、スタッフはどう思うでしょうか。

「気持ちよく話させておいて、結局は会社や自分の都合を押し付けるような話をしてくるのか」
「もう本音を話すのはやめよう」

となって、せっかく傾聴によって築いた信頼関係が崩れてしまいます。

そこで、上記のようなマネージャーからの働きかけをする前には、必ず面談相手に対して許可を取ってください。

「追加で質問してもいいかな」
「私から一つ提案をさせてもらってもいいかな」
「この点についてのフィードバックをしてもいいかな」
「私の考えを伝えてもいいかな」

など、一つ一つ丁寧に許可を取ることで、まだスタッフに話し足りないことはないかを確認していきます。

もし、スタッフがまだ話し足りない、話し終えていないことがあって、許可が取れなかった場合は、一旦「傾聴」に戻ることを意識してください。

スタッフの話もそこまで長く続きません。話し終えた際にはスタッフの方から水を向けてくれるはずです。

働きかけの5つのポイント

面談の前提となるポイントを理解していただけたら、次のステップでは、マネージャーがスタッフに働きかける時の5つのポイントをご紹介します。

非言語で話をしやすい状態を作る

スタッフの話を聞く際のポイントでもありますが、改めて、マネージャーは面談の際に全身を使って、話をしやすい状態を作りましょう。

注目すべきは非言語での表現です。

・姿勢:腕組みやふんぞり返ったような姿勢はNG
・声色:やわらかい声色
・表情:笑顔など
・態度:うなずきなど

など、全ての非言語情報を活用して、話をしやすい状態を作ることを心がけましょう。

未来への思いを引き出す

思考をポジティブに変化させる際に、未来のことを考えてもらうことは有効です。

例えば、スタッフが英語を話せるようになる、という目標を持っていたとします。

ただ英語が話せるようになるという行為だけではなく、英語が話せるようになった後の未来のことを想像することで、より目標達成への強いモチベーションを持てるようになります。

マネージャーが未来をコントロールする訳ではない

スタッフの成長はマネージャーの仕事ではありますが、成長意欲がない人を無理に成長させることはできません。

スタッフの未来は彼ら自身のもので、自発的な変化を促すことが重要です。

現段階において成長意欲がない場合は、彼らが具体的にサポートを求めるまで余計なことをせず、戦略を考えておくだけでも十分です。

面談などのコミュニケーションの繰り返しで、モチベーションが高まれば、適切なタイミングでスタッフから能動的な働きかけがあるかも知れません。その際に具体的なサポートを提供しましょう。

未来への思いを引き出す時に有効なフレーズ

具体的にスタッフに未来を想像させる時に有効なフレーズをご紹介します。

・もし何の制約もなかったら何をしたい?

何の制約もなかったら、というフレーズで、立場や条件などの想像の枠を取り払って、本音を聞くことができるようになります。

例えば幼保施設なら、「何の制約もなければ本部で働きたい」というような本音を話してくれるかもしれません。

・そこにはどのような願いがある?

この質問によって、スタッフはより可能性に満ちた未来について、本質的な欲求から話をしてくれる可能性があります。

・それが実現できたらどのようなことを感じる?

・それが達成できたらどんな気分になる?

この2つの質問で、実際に達成した時の気分を味わってもらったら、よりモチベーションが前向きになります。

注意点としては、以下のフレーズはスタッフの可能性を信じていないと捉えられてしまうことがあるので、使用に気をつけてください。

・「なんで今できないの?」
・「なんでやりたいの?」
・「なんでやらないの?」
・「いつから考えてたの?」

なぜ?という疑問詞は、時に非難の意味をもってしまうことがあります。

面談の相手に非難と受け取られては、信頼関係の崩壊につながってしまいます。十分に注意が必要です。

感情を引き出す

日本では元々感情を伝えるという文化が浸透していません。

感情は察するもの、表に出さないのが美徳とされている国民性もあって、感情の表現が苦手です。

しかし、人間の行動や意思決定を最終的に司っているのは感情と思考です。

感情を理解することで、その後の相手の行動を理解することができるようになります。

口ではわかりました、と言っていても、実際にどういう感情を持っているかは「聞かないとわからない。」

・どう感じてますか?
・何を感じてますか?

など、感情を引き出すことで、「不満だけど、決定したことは仕方がない」と分かれば、不満があるという情報が引き出せたことになります。

傾聴によって不満な気持ちのケア、説明を尽くして納得度を高めるなどの打ち手が取れます。感情を聞くことで、上っ面だけの面談にしないことが重要です。

感情を引き出すのは難しい、繰り返すことが大切

感情を引き出す質問は、初回はほぼ失敗に終わります。

「別に」「特に何も」

という答えが返ってくることを想定しておきましょう。

重要なのは繰り返しトライすること。

感情を聞かれることが日常的になり、感情を伝えても問題ないことが分かれば、今の感情を話してくれるようになっていきます。

洞察するように促す

面談の中で話したことを振り返ってもらうことで、
表面に出ていない心の深い部分を自分自身で考えてもらうように促してみましょう。

以下のフレーズを使ってみるとスタッフは自分の今までの言葉を反芻することができるかもしれません。

・話してみて、どう?
・話してみて、理解が進んだことはある?
・話している中で分かったことはどんなこと?

この問いかけによって、話し忘れていたことを思い出したり、自分の深層心理に気づくことができるかもしれません。そうすることで、スタッフの自力解決を促すことにつながります。

問いかけの言葉は短く、相手の話す時間を長く取りましょう。

発言のハードルを下げる

面談時に意見を言ってみてと促しても、
「わかりません」と返ってくる時には、発言のハードルを下げてみましょう。

例えばスタッフが「わかりません」と言った場合、

・本当にわからない
・答えたくない
・一緒に考えて欲しい
・この話題についてどうでもいい

など、真意は一歩突っ込んで聞かなければ分かりません。

その時は、

・分かっている範囲で
・話したいことだけで大丈夫
・まとまってなくてもいいから
・明瞭じゃなくてもいいから

というフレーズを使い、スタッフの再考を促すことで、真意をつかむことができます。

スタッフの意思を引き出す

課題や困りごとがあった場合に、一言「どうしたい?」と聞いてみてください。

この質問は、スタッフ自身で考え、向かいたい方向を決めることが目的です。

・どうすべきだと思うか
・どうするのが正解か

という質問にしないこと、安易な助け舟を出さないことも重要で、

仮に答えに詰まった場合でも、今のスタッフのレベルを情報として知ることができると考えます。

スタッフが話したことについては、一度必ず受け入れて、詳しく話を聞いてみましょう。

この質問について考えることで、自分の認識を反芻し、客観視することで、考えを修正して、成長につながります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?面談の際に、マネージャーがうまく働きかけをすることができれば、スタッフが自分でも気づいていないような本音に気づき、モチベーションや意欲を上げることにつながります。

その結果、職場全体の意欲が向上して、成果につながる環境を作ることができるようになるかもしれません。

同時に良い環境作りは離職の防止にも効果的です。

是非今回の記事のポイントを意識しながら面談に臨んでみてください。

スタッフのタイプを分類できれば、効果的な働きかけの言葉がわかるかもしれません。
以下の記事も是非参考にしてみてください

参考文献

この記事は、以下の書籍を参考に記述しました。

参考文献: 林健太郎著「優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?」(2022年 三笠書房)

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この記事を書いた人

株式会社シェンゲン執行役員、人事責任者
「保育のカタチ」事業責任者、採用支援コンサルタント

前職ではリクルートの代理店にて、7年間1,000社以上の採用支援を担当。シェンゲン入社後は、幼保業界の「人」に関する問題解決に特化した専門家集団「保育のカタチ」を立ち上げ、事業責任者として従事。

保育園の統括マネージャーとして運営にかかわりつつ、保育士転職サービスでのキャリアサポートや、保育園への採用コンサルタントも行う。

採用活動を内製化する伴走型の採用支援や保育士向けの研修、紹介予定派遣などのサービスを公共機関や幼保施設の運営法人に向けて提供中。祖母、母、妹が保育士という保育士一家で育った。

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