園の現場と「発達支援」のあいだにある壁をなくすために。現役保育者が立ち上げたコミュニティ

目次

1. はじめに:保育現場で深まる「発達支援」への悩み

保育の現場で、多くの子どもたちと向き合う中で、「この子はどこで困っているんだろう」「どう関わっていけばいいのだろう」と、一人で悩みを抱える保育士は少なくありません。近年、いわゆる「グレーゾーン」とされるお子さんや、特別な配慮を必要とするお子さんの在籍が増える一方で、園内だけでは十分な知識やノウハウを共有しきれないという現状があります。

また、地域の児童発達支援事業所などの専門機関と連携したくても、日々の業務の忙しさや接点の少なさから、実際には「壁」を感じてしまっているケースも多いのではないでしょうか。

こうした保育現場と発達支援の専門職、そして保護者のあいだにある構造的な「交流不足」を解消しようと動いているコミュニティがあります。それが、現役の保育教諭である仁平和也氏(以下:かずやさん)が主宰する「ぴーす」です。

2. 「つながる場」がないなら、自分で作る。ぴーす誕生の背景

「ぴーす」の活動の根底には、主宰者であるかずやさん自身が現場で感じてきた強い問題意識があります。保育は保育、発達支援は発達支援で、それぞれ独立して研修会を行っているため、お互いの専門性を学び合う機会が極めて少ないという点です。

「見ている子どもは同じなのに、両者が交わらないのは構造の問題ではないか」。そう考えたかずやさんは、組織の枠組みを超えて動きやすい個人として、オンライン上で三者が集える場所を立ち上げました。

「ぴーす」という名称には、保育・発達支援・子育てに関わるすべての人がパズルのピースのように組み合わさり、大きな絵を描いていくという願いが込められています。

3. 専門職とフラットに話し、今日から使えるヒントを得る

「ぴーす」の主な活動は、3週間に1回開催されるオンライン交流会です。これまでに30回以上開催され、毎回、全国から約30名ほどの保育者、児発管、指導員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理士、そして保護者が参加しています。

※毎回たくさんの参加者が「対話」を通じて学びを深める。

この交流会の最大の特徴は、一方的な「講義」ではなく、参加者がフラットに意見を交わす「対話」の場であることです。

例えば、過去の交流会では「保護者への伝え方のポイント」として、良かれと思って使ってしまう「普通だよ」「大丈夫だよ」といった言葉が、根拠のない励ましとして保護者に不信感を与えてしまう可能性があるといった、非常に具体的で実践的な議論が行われています。

参加した保育士からは、「保育士が判断してはいけないラインがあることに気づいた」「明日からの声かけを振り返るきっかけになった」といった声が上がっており、現場での孤独な悩みが、専門知に基づいた「確信」へと変わるプロセスが生まれています。

4. 経営層・リーダー層が見据える「学びのプラットフォーム」

「ぴーす」が目指す最終的なゴールは、このコミュニティが保育業界の「共通の学び場」としてインフラ化することです。

若手保育士が発達の遅れが気になる子への関わり方に困った際、園内の先輩が「それならぴーすに入って、専門職の人たちに聞いてみるといいよ」と背中を押せるような、安心できるプラットフォームになることを目標としています。

園の経営層やリーダー層にとっても、外部にこうした質の高い学びと相談の場があることは、職員のスキルアップだけでなく、一人で抱え込ませないことによる離職防止や、園全体の支援の質の底上げにつながるはずです。

5.保育士の「個の悩み」を「地域の力」へ

保育士にとって、自身の専門性を高めることは喜びである一方で、正解の見えない発達支援の領域は不安と隣り合わせです。「ぴーす」は、その不安を「仲間との学び」に変える場所です。

ここでは、保育士としての経験値を尊重しつつ、児発管や作業療法士、言語聴覚士といった異なる視点を持つ専門家と直接つながることができます。1対1の個別相談に近い温度感で、事例を通じた学びを深められる点は、大規模な研修会にはない魅力です。

現場での「困り感」を、専門職とのつながりによって「地域の支え」へと広げていく。こうした活動は、保育士という職能をより豊かで専門的なものへと進化させていく可能性を秘めています。

6. まとめ:誰も孤立させない保育のために

子どもの健やかな成長を願う気持ちは、職種や立場を超えて共通のものです。しかし、そのための「術」や「場所」が足りないことで、保育の現場が疲弊してしまうのは、あまりにも惜しいことです。

「ぴーす」が提供しているのは、単なる知識ではなく、立場を超えた「つながる力」そのものです。こうした小さな対話の積み重ねが、やがて保育園と発達支援の垣根を低くし、子どもたちと保護者を温かく包み込む大きなセーフティネットになっていくのではないでしょうか。

お知らせ

「ぴーす」では、オンライン・オフラインでの交流会や勉強会を定期的に開催しています。直近では、2025年2月1日に、京都と東京でのオフライン会場、およびオンラインを繋いだ大規模な勉強会が予定されています。

現場での関わり方にヒントが欲しい保育士の方、園の支援体制を強化したい経営層の方、ぜひ一度「ぴーす」の扉を叩いてみてください。

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