【保育士向け】知っておきたい『保護者対応のコツ』

保育士の日常業務で欠かせないのが保護者対応です。

保護者対応では、送り迎えの対応、子どもの様子についての相互の連絡、確認、など、保護者さんとの連携がうまくいけばいくほど、子どもたちをきめ細かにみながら成長を見守っていくことができます。

実際の保育園でも、保護者対応は得意に感じる保育士と、苦手だと感じる保育士がおり、悩みのひとつになっています。

保護者対応でお互いに気持ちの良い関係を作っていくため、今回はよりよい保護者対応のコツについて解説します。

目次

保育士の保護者対応の肝は、「やり方」ではなく「在り方」

まず、保護者対応の大前提として、保護者と接する際の「在り方」が重要です。やり方や方法をいくら学んだとしても、肝心の土台である心や在り方の部分が全く無ければ相手には伝わりません。

在り方があって初めてやり方を活かせる

保護者対応では、保護者が子どもを預ける時にどんなことを心配しているか、保育士が想像力を働かせることが重要です。

そこで保護者の心に寄り添う、という在り方があって、保護者が抱えている悩みや不安を一緒に解決していくときに、はじめて保護者対応の方法、やり方を活かすことができます。

保護者一人ひとりにとって、子どもはかけがえのない存在です。初めてのお子さんで、まだ子育ての勝手が分からない保護者の方もいらっしゃいます。その不安な心に寄り添ってあげられるかどうかは、保育士の保護者対応の仕方にも影響を与える部分です。

保護者と保育士も人と人の関係です。

自分の不安や悩みを理解してくれない、と心を閉ざされてしまっては、本当の解決にはつながりません。

このマインドを忘れずに、保護者対応の方法をみていきましょう。

保護者対応の基本

実際の保護者対応の基本は、人対人の人間関係の構築そのものです。日頃から以下の基本を意識して対応するようにしてみましょう。

ビジネスマナーとしての態度、言葉遣い。笑顔で明るくは全ての基本

まず、笑顔で明るく挨拶をしましょう。挨拶の印象だけで、その後のコミュニケーションがぐっと楽になります。保護者は自分だけでなく、他の保護者への対応も目に入ります。他の保護者に対しての雑な対応は、自身にも起こりうることだという不信感につながります。

笑顔で明るく対応しましょう。

また、保護者の方にまるで友達と話すかのような接し方をするのも良くありません。あくまで保育園でもビジネスマナーとしての失礼のない言葉遣いや態度を選びましょう。

さらに、保育士と保護者との会話では、全く意図せずにしてしまった発言で、仮に親近感を持って言ったつもりでも、保護者としては傷ついたり不快に思うようなこともあります。

ありがちな失敗例として、「子どもを決めつけで話す」、「子どもの失敗や苦手なことを茶化したり、侮辱してしまう」「他の子どもと比較して優劣で話してしまう」

など、保護者が失礼だと感じてしまうようなことは言わないようにしましょう。

保育士が保育園からのお願いを伝える時も注意が必要です。

「〜してください。」というような表現は、上から目線に聞こえてしまいがち。ビジネスマナーでは「大変恐縮ですが」や「お手数ですが〜していただけますでしょうか」など、何かをしてもらうときはより丁寧に伝えることを意識しましょう。

小さなコミュニケーションを頻繁に取る

頻繁なコミュニケーションは、人間同士の高感度、親密度をあげるのに重要です。ほんの些細なことでも、子どもの園での生活で気づいたことを、短い時間でも頻繁に伝えてあげることが積み重なって、保護者との信頼関係が築かれていきます。

保護者が急いでいる時も、少しの時間でも子どもが楽しそうにしていた様子だったり、うまくできたことなどを報告してあげるだけで、そんなところまで見てくれているんだ、という気持ちになります。

マイナスな事柄の伝え方を工夫する

保護者と保育士との連絡帳や、送り迎えの際の報告では、ポジティブなことだけではなくネガティブなことを伝えなければならない時もあります。

もちろんできるだけ多くポジティブなことを多く書くことは重要ですが、それでもマイナスな事柄(例えば子どもがトラブルを起こしてしまった、怪我をしてしまった、など)を伝えなければならないこともあります。

その時は、できるだけ口頭で、柔らかい口調で伝えましょう。伝えづらいことも、もし伝えなかった場合は、顔を合わせる機会があるのになぜ伝えないのか、という不信感を抱かせてしまう原因にもなります。特にマイナスな事柄に関しては、事務的な伝え方にならないように注意しましょう。

筆者の子どもが通っている保育園では、担任の先生だけでなくそれ以外の先生も子どもの怪我などを把握してくれており、何かあった場合は複数の先生が声をかけてくれるようになっていました。

このような情報共有がしっかりとされているだけでも、保護者としては、安心して子どもを預けられる保育園だなという認識になります。

信頼される保育士になるための信頼関係構築方法

日ごろから保護者と信頼関係を築いておけば、トラブルが発生した際にも保育士からの伝達事項が保護者に受け入れられやすく、スムーズな問題解決につながりやすくなります。

保護者から信頼される保育士になるための信頼関係構築方法を紹介します。

傾聴が何より大切。とにかく話をよく聴く

保護者と接している際には、保護者の話をよく聴く、ということが大切です。

ただ音声として聞く、のではなく、保護者の価値観や信念、感じていることにまで寄り添いながら「聴く」ということです。

このような話の聴き方を「傾聴」といいます。

保護者との会話では傾聴が大切です。

多くの保護者は初めての子育てと忙しい仕事の両立や、子どもたちが保育園で元気に楽しく過ごせているだろうか、健やかに成長しているだろうか、ということに疑問や悩みを抱えているものです。

保護者としては、保育のプロである保育士に、子育てについての相談をしたいときもあれば、不安な気持ちを解消してほしいこともあります。

また、第2子以降であっても、第1子との関わり方については初めての経験です。子どもの状況によっては第2子でも不安になることもあります。

このようにさまざまな不安や悩みを抱えている保護者からの話について、クレームに限らず、先ほどの傾聴のスタンスでまずは一通りの話を聴いてみましょう。

この際、保育士が自分の経験などを、保護者が話をしている最中に口を挟むことはもちろん、仮に違うなと思っていることに対しても反論することは禁物です。

もしあなたが誰かに悩みを相談している際に、食い気味に正論で反論されたら、もう相談する気力を失ってしまうでしょう。

まずは「話をとにかく聴く」という傾聴の姿勢が、保護者と保育士の信頼関係の基本となります。

保護者対応はどうやってうまく話そう、というところに意識が向いてしまいがちですが、話を聴いた後であれば、伝え方が多少不慣れでも、保護者との関係はうまくいくことの方が多いかもしれません。まずは聴くことに意識を向けてみましょう。

トラブルやクレーム時の対応で、さらに信頼がアップすることもある

保護者対応の際に、最も対応に気を使う場面はトラブルやクレームになってしまった時の対応です。

保護者が保育士の対応に不満をもつケースは、要望が叶わなかった時ではなく、要望を話している時にしっかり聴いてもらえなかったケースです。

自身の要望が叶わなくても、解決に向けてしっかりと動いてくれたことがわかった、自分の話や子どものことをしっかり考えてくれて行動してくれた、このようなことに対して、保護者は信頼を深めることもあります。

もしクレームになってしまった場合は、こちらの手順を参考に相手の感情に寄り添ってみましょう。

基本手順1 相手の「心情を理解」して保護者の話をよく聴き、不快にさせてしまったことに対してお詫びをする。
基本手順2 何が問題になっているか「事実を確認」する
基本手順3 無理だと決めつけず、問題の解決策や代替案などの「解決策を提示」する
基本手順4 再度の「お詫び」とお話していただいたことへの「感謝」を伝える

その際、以下のポイントに気をつけてください。

・誠心誠意、最後まで話を聴く
・否定、反論をしない
・安易な謝罪や回答をしない

以上の手順で保護者対応をしてみましょう。

そして速やかに、上司や同僚への共有も忘れずに行うことが重要です。

保護者は保育士をこのように見ている

対応の時の態度に安心感があるか

保護者から見れば、誰が新人の先生で、誰が非常勤の先生で、ということは分かりません。保育園で子どもをみてくれている以上、全員プロの保育士です。

保護者は大切な子どもを預けています。プロとして頼れる保育士、安心感のある保育士に預かってほしいと考えています。

例えば保護者が何か質問をした時に、曖昧な対応であったり、不安そうな受け答えだった場合、「この保育士さんに自分の子どもを預けても大丈夫だろうか」と保護者の側も不安になってしまいます。

このようなことが積み重なると、保護者は不信感を持ち始め、良好な関係を維持するのが難しくなってしまいます。些細なことでも目についたり、不安になって、不必要なトラブルが起きてしまう可能性もあります。

子どもたちから好かれている先生か

子どもたちは大人以上に敏感です。その子どもたちから保育士が好かれているか、というところは、保護者からは大変気になる点です。

なぜなら、子どもたちがその保育士を好きかどうかで、保護者は自分達がいない間の保育士の様子を推測することができるからです。

具体的には、もし子どもが保育園に行きたがらなかったり、先生になつかない、先生を怖がっているなどの様子があれば、保育士の普段の子どもへの接し方や、保育のやり方を問われる可能性もあり、最終的にはクレームに発展してしまうこともあります。

保護者に気を遣い、関係を良好にしているつもりでも「保護者が見ていない普段の保育」は子どもたちが見ています。保護者対応の基本が普段の保育の在り方そのものであることを改めて肝に銘じましょう。

トラブル、クレームになってしまったときの保護者対応をご紹介

保育園でのトラブルやクレームに関しては、さまざまな種類がありますが、大きく分けると主に以下の3つに分けられます。

保護者が保育園の対応に不満を持ち、クレームを伝える場合

・相談後に何の連絡もない
・保育士が相談や要望を軽く受け流し、真剣に取り合ってくれない
・子どもがケガをしても気づいていない、気にしていない
・質問や相談に対して言い訳ばかりする
・子どもにも保護者にも挨拶をしない、冷たい

以上のような対応でのクレームになってしまった場合は、保育園側の意識不足が根底にあります。

保育士が保護者や子どもにしっかりと向き合ってほしい、もっと協力して子どもの成長を一緒に見守りたいと、保護者は感じています。

本来は意図していないことかもしれませんが、保護者がこう感じていた場合は、すぐに改善が必要です。

保育園で過ごしている時間での怪我や・お友だちとのけんかなどのトラブルがあった場合

保育園で、一緒に過ごす時間が長い子ども同士の間では、頻繁にトラブルが起こります。

おもちゃや絵本の取り合いから、転倒による怪我、果てはお友だちとけんかしてしまったなど、保育園で子どもが怪我をしてしまう、ということは良くあります。

子どもが怪我をした場合は、どのような状況で怪我をするに至ったのか、怪我の程度はどの程度なのか、保育園はどのような対応をしたのかなどをお迎え時に口頭で詳細に伝えましょう。

また、怪我の程度によっては保護者に連絡を入れたうえで、速やかに保育士が病院へ連れて行く必要があります。

被害者側の園児の保護者が加害者側の保護者に謝罪を求める場合、加害者側の保護者が謝罪をしたいので相手の連絡先を教えてほしいと希望する場合は、「保育園から個人情報を伝えることはできない」「保育園が仲立ちする」などの方針がある園ではそちらを伝え、理解してもらったうえで対応しましょう。

また、こういったケガや事故などの対処はご自身一人で行うのではなく、必ず上司や園長などと相談して園全体で対処しましょう。

保護者が保育園に改善要望などを伝える場合

クレームではないですが、保護者からの建設的なご意見やご要望を伝えられることがあります。

口頭で伝えられる、メールで伝えられる、紙で伝えられるなど、さまざまなケースがありますが、実際にお話し合いになることも。

ここでも大切なのはまずしっかりとご意見を聴くということです。傾聴の姿勢でしっかりとお話を受け止め、ご意見をいただいたことに感謝の気持ちを示しましょう。

また、いただいたご意見に対しての進捗を逐次お伝えして、結論が出た場合にもしっかりと結果をお伝えする、ということを忘れないようにしましょう。

園や子どものことを思って勇気を出して意見を伝えてくださっているので、お伝えし忘れなどの不手際が起こると、さらなるクレームに発展してしまう可能性もあります。

真摯に対応することが大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

繰り返しになりますが、保育士の保護者対応はまず在り方が大切です。

一緒に子どもたちを見守り育てていく、という姿勢で保護者との連携を深め、子どもたちのより良い保育につなげていく一助になれば幸いです。

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この記事を書いた人

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