厚生労働省が策定した保育指針は、保育の質を向上させるための重要なガイドラインとなっています。そこでこの記事では、「保育指針」とは何か、そして「保育所保育指針」がどのように改訂されたのかを解説します。改訂内容に関する詳細や、保育士として押さえておくべき重要なポイントもあわせて紹介します。
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引用元:保育のカタチ
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許可番号 | 厚生労働大臣許可番号有料職業紹介事業:27-ユ-303764 労働者派遣事業:派27-304996 |
雇用形態 | 正社員、契約社員、パート |
求人施設 | 保育園、幼稚園、認定こども園、病児保育、事業内保育、学童保育、託児所など |
対応エリア | 全国 |
連絡手段 | 電話番号:06-6210-5326 LINE |
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保育指針とは?
保育所保育指針とは、保育所における保育内容やその基本的な考え方を詳細に規定したものです。この指針は、厚生労働省により1965年(昭和40年)に制定され、その後1990年、2000年、2008年に改訂が行われました。最も最新の改訂は2017年度に厚生労働省から発表され、2018年4月1日から施行されています。
保育所保育指針は、保育の現場で一定の質を保つための基準として重要です。そのため、保育士や保育に関わる全ての人々が理解しておくことが求められます。
保育指針における5領域とは
質の高い保育を実現するためには、保育所保育指針の「第2章 保育の内容」をしっかり理解することが必要です。この章には、保育を通して育む力としての「ねらい」と、そのねらいを達成するための具体的な方法としての「内容」が明記されています。
これらの「ねらい」と「内容」は、指導案や保育記録に不可欠な要素です。「ねらい」と「内容」は、乳児期、1~3歳未満児、3歳以上児の各発達段階ごとに異なります。乳児期は3つの視点から整理され、1~3歳未満児および3歳以上児は「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5つの領域で構成されています。
この5領域は、保育の基礎をなす重要なポイントとなるため、これらを意識しながら子どもたちと接することが重要です。ここでは、3歳以上の子どもについて、保育所保育指針より内容を抜粋するので、下記でそれぞれ見ていきましょう。
健康
子どもの健やかな成長を促し、自己管理能力を育てるために、基本的な健康習慣や体力づくりを進めます。
ねらい
①明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。
②自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。
③健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをもって行動する。
内容
1.保育士等や友達と触れ合い、安定感をもって行動する。
2.いろいろな遊びの中で十分に身体を動かす。
3.進んで戸外で遊ぶ。
4.様々な活動に親しみ、楽しんで取り組む。
5.保育士等や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ。
6.健康な生活のリズムを身に付ける。
7.身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分でする。
8.保育所における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動する。
9.自分の健康に関心をもち、病気の予防などに必要な活動を進んで行う。
10.危険な場所、危険な遊び方、災害時などの行動の仕方が分かり、安全に気を付けて行動する。
人間関係
子どもたちが円滑な人間関係を築き、他者と協力・共感する力を育むための働きかけを行います。
ねらい
①保育所の生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。
②身近な人と親しみ、関わりを深め、工夫したり、協力したりして一緒に活動する楽しさを味わい、愛情や信頼感をもつ。
③社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。
内容
1.保育士等や友達と共に過ごすことの喜びを味わう。
2.自分で考え、自分で行動する。
3.自分でできることは自分でする。
4.いろいろな遊びを楽しみながら物事をやり遂げようとする気持ちをもつ。
5.友達と積極的に関わりながら喜びや悲しみを共に共感し合う。
6.自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気付く。
7.友達のよさに気付き、一緒に活動する楽しさを味わう。
8.友達と楽しく活動する中で、共通の目的を見いだし、工夫したり、協力したりなどする。
9.よいことや悪いことがあることに気付き、考えながら行動する。
10.友達との関わりを深め、思いやりをもつ。
11.友達と楽しく生活する中で決まりの大切さに気付き、守ろうとする。
12.共同の遊具や用具を大切にし、皆で使う。
13.高齢者をはじめ地域の人々などの自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しみをもつ。
環境
身の回りの環境に対する興味や関心を引き出し、自然や社会について幅広い理解を深めるための取り組みです。
ねらい
①身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で、様々な事象に興味や関心をもつ。
②身近な環境に自分から関わり、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入れようとする。
③身近な事象を見たり、考えたり、扱ったりする中で、物の性質や数量、文字などに対する感覚を豊かにする。
内容
1.自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く。
2.生活の中で、さまざまな物に触れ、その性質や仕組みに興味や関心をもつ。
3.季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く。
4.自然などの身近な事象に関心をもち、取り入れて遊ぶ。
5.身近な動植物に親しみをもって接し、生命の尊さに気付き、いたわったり、大切にしたりする。
6.日常生活の中で、我が国や地域社会における様々な文化や伝統に親しむ。
7.身近な物を大切にする。
8.身近な物や遊具に興味をもって関わり、自分なりに比べたり、関連付けたりしながら考えたり、試したりして工夫して遊ぶ。
9.日常生活の中で数量や図形などに関心をもつ。
10.日常生活の中で簡単な標識や文字などに興味をもつ。
11.生活に関係の深い情報や施設などに興味や関心をもつ。
12.保育所内外の行事において国旗に親しむ。
言葉
言葉の理解と表現を豊かにし、コミュニケーション能力を伸ばすための支援を行います。
ねらい
①自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
②人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう。
③日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、言葉に対する感覚を豊かにし、保育士等や友達と心を通わせる。
内容
1.保育士等や友達の言葉や話に興味や関心をもち、親しみをもって聞いたり、話したりする。
2.したり、見たり、聞いたり、感じたり、考えたりなどしたことを自分なりに言葉で表現する。
3.したいこと、してほしいことを言葉で表現したり、分からないことを尋ねたりする。
4.人の話を注意して聞き、相手に分かるように話す。
5.生活の中で必要な言葉が分かり、使う。
6.親しみをもって日常の挨拶をする。
7.生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付く。
8.いろいろな体験を通じてイメージや言葉を豊かにする。
9.絵本や物語などに親しみ、興味をもって聞き、想像をする楽しさを味わう。
10.日常生活の中で、文字などで伝える楽しさを味わう。
表現
子どもが自己表現を通じて感性や創造性を育むよう、さまざまな表現活動を取り入れます。
ねらい
①いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。
②感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。
③生活の中でイメージを豊かにし、さまざまな表現を楽しむ。
内容
1.生活の中で様々な音、形、色、手触り、動きなどに気付いたり、感じたりするなどして楽しむ。
2.生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする。
3.様々な出来事の中で、感動したことを伝え合う楽しさを味わう。
4.感じたこと、考えたことなどを音や動きなどで表現したり、自由にかいたり、つくったりなどする。
5.いろいろな素材に親しみ、工夫して遊ぶ。
6.音楽に親しみ、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使ったりなどする楽しさを味わう。
7.かいたり、つくったりすることを楽しみ、遊びに使ったり、飾ったりなどする。
8.自分のイメージを動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだりするなどの楽しさを味わう。
これら5つの領域は、子どもの全人格的な成長を支える基盤となるものです。それぞれの領域をしっかりと理解し、日々の保育に取り入れることが重要です。
改訂内容と押さえておきたいポイント
保育指針の改訂に伴い、いくつかの重要なポイントが見直されました。以下では、その具体的な内容を紹介します。
- 0歳〜3歳未満時の保育に関する記録が充実
- 保育所の定義の明確化
- 健康および安全に関する記載の見直し
- 地域の子育て支援内容の拡充
- 職員に関する記載内容の拡充
それぞれ詳しく見ていきましょう。
0歳〜3歳未満時の保育に関する記録が充実
乳児から2歳児までの時期は、心身の発達において非常に重要です。2015年(平成27年)に施行された子ども・子育て支援新制度の導入によって、この年齢層の子どもたちが保育所で過ごす機会が増えました。そのため、乳児および1歳以上3歳未満児の保育に関する内容も大幅に充実されました。
特に乳児にとっては、特定の大人との継続的な関わりが情緒の安定に寄与します。乳児期の発達はまだ5つの領域に分けるのが難しいため、以下の3つの視点で保育の目的や内容が整理されています。
- 身体的発達に関する視点: 「健やかに伸び伸びと育つ」など
- 社会的発達に関する視点: 「身近な人と気持ちが通じ合う」など
- 精神的発達に関する視点: 「身近なものと関わり感性が育つ」など
これらの視点に基づいた保育の内容は、養護に関わる保育内容と一体化して展開されています。小さな子どもたちの成長や発達の過程を細かく記録し、より適切な指導とケアが提供できるようになったのです。
保育所の定義の明確化
これまでの保育所は「働く保護者の代わりに子どもの養護を担う場所」としての役割が強調されてきました。しかし、改定により、保育所は「単なる養護の場ではなく、幼児教育を提供する施設」としての役割が明確になりました。
保育所は小学校教育の前段階として、学習能力の基盤を築く重要な役割も果たしています。保育所では、コミュニケーション力や社会性、表現力などを「教育」していくことで、子どもたちを次のステップである小学校教育へとつなげる役目を担っていくと明確にされたのです。
健康および安全に関する記載の見直し
改定により、アレルギーを持つ子どもへの対応や感染防止、食育、さらには災害への備えなど、子どもの健康と安全に関する内容が充実しました。
保育者は乳幼児一人ひとりの健康状態を観察し、定期的に成長と発達を確認します。また、同時に子どもたちが自分の体や健康に興味を持つように働きかけ、心身の機能を向上させるための適切な支援を提供する必要があるとされました。
健康的な体を育むためには、食育の推進も欠かせない要素です。さらに、重大な事故を未然に防ぐため、園内外での安全管理と事故防止に努めることが求められます。また、防災対策として日頃からの備えや、災害が発生した際の対応体制を整えるために、地域や自治体との連携も重要となるでしょう。
地域の子育て支援内容の拡充
2017年(平成29年)に保育所保育指針が改定され、「保護者に対する支援」の章が「子育て支援」として新たに位置づけられました。以前の指針では、保育所に通う子どもの保護者を主に支援対象にしていましたが、改定後は地域全体の親子も支援対象に含めています。
具体的には、核家族化や地域のつながりが薄れる中で、子育てに困っている人や育児に不安を感じている人を支援するために、保育所はその専門知識を活かして子育て相談や一時預かりなどのサービスを提供する役割を担うとされました。
また、外国籍の家庭や発達支援などの個別のニーズに対応すること、さらに児童虐待のケースが発生した際には児童相談所と連携して適切に対応することも求められています。
職員に関する記載内容の拡充
保育所の役割が増えると同時に課題も複雑になっているため、保育士だけでなく、全ての職員のキャリアアップを組織的に進める必要が出てきました。
この必要性は以前から指摘されており、2017年には厚生労働省が「保育士等キャリアアップ研修ガイドライン」を策定していました。このガイドラインの内容が、保育所保育指針の改訂にも反映された形となっています。今後は、保育所全体でキャリア形成を進めることで、子どもたちが安心して豊かに育つ環境を整えることが期待されます。
また、職員のキャリアパスを考慮した研修計画を作成し、園長などの管理職の下で組織的に実施する体制も構築することが求められています。
まとめ
保育指針とは、子どもの保育における基本的な方針や指導内容を示す重要なガイドラインです。2017年の改訂では、時代の変化とともに保育所の役割や機能が拡大し、より多様なニーズに対応するための内容が盛り込まれました。
この改訂により、保育所が果たす役割は一層重要となり、子どもたちが健やかに育つための正しい指針が示されました。保育所関係者にとって、これらのポイントを理解して実践していくことが、より良い保育環境を築く鍵となるでしょう。
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