はじめに
みなさんの園では保育実習、幼稚園実習を受け入れていますか?
・実習を受け入れる余裕がない
・新卒を採用していないので実施していない
・受け入れてみたいが、どうすれば良いのか分からない
など、受け入れをしていない理由は様々です。
しかし、採用の観点からいうと、実習の受け入れは早期から採用候補者と接することができる大チャンス。
近年の売り手市場によって、ますます採用活動は早期化しています。
その中にあって、実習によって2週間一緒に仕事をすることで、早くから園について知ってもらったり、相性を見ることができる貴重な機会が実習です。
この記事では、採用の視点から実習の際に見るべきことと、実習生に対してポジティブな印象を与えるために園として準備しておくべきこと、気をつけることをご紹介します。
保育実習はいつ頃にどれぐらいの期間行われる?
そもそも保育実習とは、どのようなことをいうのでしょうか。
保育実習ガイドラインには以下のように記載があります。
「これまでに養成校で学んできた知識や技能、学生自身が抱く保育像を基礎とし、実践の場における総合的な体験とそれらが結びつくことを通して、保育実践へと応用出来る力を養うものである。実習により保育者として必要な実践的能力や知識、技術を理解し、学生自らが課題を見出す契機となると同時に、その解決の手がかりを得ることをその目標とする。」
全国保育士養成協議会 東北ブロック研究委員会作成ガイドラインより引用
そして、養成校で保育士資格を取る際には必ず行わなければならないものです。
実習には、保育実習Ⅰ〜Ⅲまでの科目があり、
保育士資格取得のためには、
保育実習Ⅰ(保育所)&(施設)が必修
保育実習Ⅱ(保育所)or 保育実習Ⅲ(施設)が選択必修
という流れになります。
期間は、それぞれの実習が2週間。
つまり、資格取得のためには、2週間の実習を3回行う必要があります。
実習先は、養成校が指定した場所で行う場合と、実習生自身が探して決める場合があり、いずれにせよ、探せる環境が整っていること、実習を受け入れていることを示しておくことが重要です。
各県の保育協会や福祉協議会には、実習受け入れ先の一覧が載せてあるところもあります。
このようなところに掲載があることで、実習生は実習先を探しやすくなります。
参考:大阪府の体験受け入れ園のリスト
https://www.osakafusyakyo.or.jp/fcenter/wp-content/uploads/2022/10/20220906hoikushitaiken-ichiran.pdf
保育実習をどの年次のいつ頃に行うのかは、養成校のカリキュラムによっても変わります。
ただ、概ね1年次から実習の機会があると考えてよいでしょう。
中には実習を4年間で5回行う大学もあります。
保育実習は新卒採用の最高のチャンス
保育実習は上述の通り、1年次から行うことが多いため、採用の視点では、1年次から新卒の候補者に接することのできる機会です。
逆に、候補者としても保育実習は自身の就職先を見極める機会でもあります。
実際の保育士さんに話を聞いてみると、保育実習で行った園に就職したという人や、保育実習に行った園の働き方がきつく、ここで働くのはやめようと思った、など、シビアに自身の就職後をイメージしている方が多くいらっしゃいました。
幼保施設の採用担当者は、園に良いイメージを持ってもらい、ここで働きたいと思われるような実習を行う必要があります。
・園の将来像を伝える
・園の理念を伝える
・先生たちの人間関係について伝える
・働き方をイメージしてもらう
など、現場の先生と連携して候補者に園の魅力を伝えていくことが重要です。
保育実習を受け入れる前にしておくこと
実習全体の流れの把握
まずは、園として保育実習を受け入れる前に、大まかな全体の流れを確認しておきましょう。
実習は上記の流れで行われます。
実習受け入れ前に事前に準備しておくこと
全体の流れを確認できたら、次に受け入れる前の準備についてご紹介します。
受け入れ体制を整える
施設長や指導担当者および職員との連絡・調整を密にし、施設内での受け入れ体制を整えておきます。
(1)「誰が指導を担当するのか」「誰に報告相談するのか」「オリエンテーション資料はできているか」などの確認をします。
(2)指導計画(年間・月案・週案・日案)について、再確認しておきます。
(3)実習期間中の施設内の行事と実習の時間を調整します。
(4)養成校担当教員との事前打ち合わせを行います。その際に次のことを伝えましょう。
・施設の概要や状況、子どもたちの様子、教育・保育方針
・準備物、服装、心構え、一日の流れ
(5)実習期間中における指導担当者や保育者の目標設定を行います。
・どのような指導者になりたいのか
・どのようなことを実習生に学んでほしいのか
実習生の受け入れに必要な資料など
実習前と実習中は、職員間や指導担当者及び実習生とで情報を共有していると、実習がスムーズに進められます。そこで、情報共有に必要な資料を作成して、資料と振り返りなどで各自が現状認識を共有できるような体制を作っておくことが重要です。
保育実習のポイント
保育実習を受け入れる際のポイントを以下にまとめました。
各ポイントごと、具体的なチェック項目がありますので、是非参考にしてみてください。
1.実習生を受け入れるための、人的な環境を整える。
□ 実習生が質問や会話をしやすいよう、笑顔や声掛けはできていますか。
□ 実習生の目の前で、職員に対する批評をしていませんか。
□ 実習生の目の前で、子ども・保護者に対する批評をしていませんか。
2.実習生を受け入れるための、物的な環境を整える。
□ 実習生が学びやすいように、机やロッカーなどを用意できていますか。
□ 職員とは別の休憩場所(実習生が一息つけるような場所)を作っていますか。
□ 休憩場所がない場合、職員と実習生の休憩時間が重ならないようにする等の工夫や配慮ができていますか。
□ 男性の実習生が来ることも考慮し、更衣室をわけるなどの配慮ができていますか。
3.実習生は何が不安なのか、何を学びたいと思っているのかをよく話し合い理解しておく。
□ 事前に実習生から何か不安なことはないか、聞きたいことはないか聞いていますか。
□ 失敗を恐れないで挑戦することや、失敗こそが成長の糧となることを実習生に伝えていますか。
□ 実習生の学びたいところを聞いていますか。
□ 実習生の得意なことや不得意なこと等を理解していますか。
4.実習生に自園の理念や特色を伝える。
□ 各施設で大切にしている理念や基本方針、特色を伝えていますか。
□ 実習生にどのような実習内容があるのかを伝えていますか。
□ 上記を伝える際に、保育に対するイメージがわくような、理解しやすい資料等を作っていますか。
5.実習生の受け入れの体制について職員間で話し合う。
□ 実習指導の担当者を決めていますか。
□ 実習生を受け入れる意義を職員同士で話し合っていますか。
□ 指導担当者以外の職員も含めて、実習生の受け入れ方や指導方針を話し合い、協働していますか。
□ 実習生の個性を認め、失敗などの経験も成長の糧だと理解し、実習生の理解に努めていますか。
□ 指導担当者が指導方法や評価などについて、一人で悩みを抱え込まず、相談しやすい体制をつくっていますか。
□ 上記を踏まえて、指導担当者に実習生の個々に合わせた具体的な実習内容を任せていますか。
6.実習生、養成校、施設が目標や実習内容等を共有する。
□ 実習生や養成校が実習で求めていることを、施設側は理解していますか。
□ 実習内容を示す際に、理由や目的といった説明はできていますか。
7.施設内のモラル、良識を確認する。
□ ハラスメントに対する意識と危機管理はできていますか。(実習は指導の場ですので、懇親会などの声掛けは基本的にしてはいけません。)
□ 実習生の手本となる行動をとっていますか。(職員や実習生の批評など、バックルームやランチ時の何気ない会話も聞かれています。)
□ 個人情報の保護や守秘事項はしっかりと守られていますか。(保護者や子ども、実習生の情報は守られていますか。)
□ 一日の実習時間や、休憩時間は守っていますか。時間外で業務をさせていませんか。
8.実習記録のルールを整理しておく。
□ 実習時間内に実習記録を記入する時間を作れますか。
□ 実習記録の添削について、職員によって指導内容が変わらないよう、表記の方法や表現をある程度統一した見本を作成していますか。
□ 実習記録の過度な再提出を求めていませんか。
□ 実習記録の用紙の範囲内で記入が収まるように指導し、添削も用紙内に収まる程度にしていますか。
9.さらなる効果のために、養成校にも協力をお願いする。
□ 養成校にも施設の状況を知らせていますか。
□ 実習生・養成校・施設で、実習の目標や方針等の情報を共有していますか。
□ 養成校が施設に求めている実習の内容を共有できていますか。
□ 実習生の特徴や課題は養成校に聞いていますか。
□ 養成校・実習生とともに実習のルールを確認していますか。
□ 養成校教員の巡回相談の際に、実習生と養成校教員が面談できる時間を設定していますか。
参考:兵庫県保育協会(「保育実習・教育実習受け入れてびき」)
https://hyogo-hoikukyokai.or.jp/pdf/publications/jisshusei_ukeire_tebiki.pdf
実習生は園のここを見ている
実際に受け入れがスタートすると、実習生は自身がこの園で働くことを想定しながら実習を進めます。
自身の実習についてだけではなく、
などをみて、ここで働きたいと思うことも、ここは絶対に嫌だと思うことも考えられます。
もし絶対に嫌だと思われてしまった場合、どれだけ説明会や求人でメリットを記載しても、実際に体験した実習生からは応募はこないでしょう。
また、実習生間での情報交換によって、ネガティブな情報はすぐに拡散してしまいます。
実習生受け入れの際は、将来の人材候補と考えて対応することが採用において重要です。
実習生とは継続的に連絡を取る
実習が終了したあとも、実習生は有力な採用候補です。
就職の際はまず実習先を1番に思い出してもらえるよう、定期的に案内などの連絡を取って、関係構築をしていくことが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
実習は、一般企業でいうインターンのようなもの。
採用に困っている園は、有力な採用候補をしっかりと掴んでおけるよう、実習を活用してみてはいかがでしょうか。